研究課題
星間物質の組成や物理状態の診断に利用する「あかり」中間赤外線全天マップの、精度向上のための解析を、引き続き進めた。「あかり」データの主な前景光である、我々太陽系の惑星間空間塵放射 (黄道光) のモデリングを改善することで、データからの黄道光の差し引き精度を向上し、より精度の良い銀河面放射マップを作成することに成功した。そして、このマップを利用して、星間空間における、有機物・シリケート等物質の局所的な物理状態を解析する方法を確立し、大質量星形成領域の研究に応用した (Hattori et al. 2016)。一方、惑星形成過程における物質進化の理解のために、惑星形成過程の天体と思われるダスト円盤 (デブリ円盤) の探査を続けている。今年は、すばる望遠鏡の中間赤外線分光器COMICSを用いて、「あかり」で見つけた天体の内、~6個について追観測を完了した。また、前述の黄道光モデリングの改善により、一番身近な惑星系のサンプルとしての、太陽系のダスト円盤の物理的性質・起源について、新たな情報を得られた (Kondo et al. 2016)。
3: やや遅れている
初年度に黄道光の再モデリングを追加したことにより、研究進捗の遅延が出ている。ただし、これは惑星系の一つとしての、太陽系のダスト円盤の物理状態の新たな理解に繋がり、本研究の目的に対して別視点から重要な情報を提供している。
星間空間の物質の物理状態の診断に関しては、最新の遠赤外線マップもとりいれて、より精度良くより細かい空間スケールで診断する方法を模索する。さらに、精度の向上した中間赤外線全天マップを利用して、物質供給の包括的な理解のために、銀河系全体での質量放出星から星間空間への物質の流れを大局的に調査する。デブリ円盤における物質進化の理解においては、すばる/COMICSで分光観測した天体の、ダストの性質について詳細な解析を行うとともに、引き続き、惑星形成における物質進化の包括的な理解を目指し、他のサンプルの観測提案を続ける。また、これらとの比較のために、太陽系内のダストの組成・分布のモデリングをさらに追求し、小惑星帯起源のダスト成分のさらなる解析を行う。
大量のデータ解析と、複数の共同研究者とのやりとりが発生するフェーズになり、これをサポートしてくれる人材を探していたが、次年度から雇用ということになってしまった。
データ解析補助として一名を雇用し、銀河面物質の放射マップの系統的な検証と、共同研究者とのインターフェイス役をお願いする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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