研究課題
「あかり」中間赤外線全天サーベイ観測データに基づき、星間空間から惑星系形成円盤に至るまでの固体粒子の物質進化を理解するとともに、赤外線観測から得られる、物質の物理状態とその生成条件に基づいて、星間現象や惑星系形成過程を理解する手法の確立を目指してきた。星間物質については、「あかり」中間赤外線全天マップを元に、有機物の衝撃波よる変性や破壊を議論する手法を、銀河系の内側のみならず外側の星形成領域においても、応用した。惑星系形成過程の塵円盤に関しては、「あかり」衛星によるサーベイで検出した天体について、すばる望遠鏡/COMICS等による分光観測を進め、消失タイムスケールの短い粒子で構成されている系については、その固体粒子放射の時間変動を評価するための、モニター観測を行った。また、これらの系における微量ガスの存在を確かめ、ガスと固体の相互作用を調べるため、ASTE, ALMA電波望遠鏡を使い、ガスの検出・物理状態の推定のための観測を進めた。惑星系の進化後期の一番身近なサンプルである、太陽系における塵粒子 (黄道光雲) については、モデリングが不十分のまま残っていた、ダストバンド成分 (小惑星帯起源の成分) のモデリングを行い、小惑星帯から固体粒子が供給されてから、まだ力学平衡に到達していない状況を明らかにした。昨年度までの、黄道光雲の解析成果と合わせ、太陽系の塵粒子のダイナミックな描像が明らかになってきた。最終年度は、これらの観測成果を総合し、星間空間から惑星形成に至るまでの物質進化を包括的に議論し、物質の物理状態から天体現象そのものを解明する手段について、まとめる。
3: やや遅れている
一昨年度、黄道光の高精度モデリングをやりなおし計画が遅延した分、遅れている。
黄道光の高精度モデリングをやりなおし、計画遅延があったが、当初の予定通り、「あかり」中間赤外線マップを全世界の研究者が利用可能なフォーマットに仕上げる。そして、このデータに基づき研究してきた、星間空間から惑星系形成円盤に至るまでの固体粒子の物質進化の事例や、赤外線観測から得られる、物質の物理状態とその生成条件に基づいて、星間現象や惑星系形成過程を理解してきた個々の研究を、総括する。
本研究の基盤である「あかり」中間赤外線全天マップの較正の際に、前景熱放射の原因である太陽系の惑星間空間の固体粒子について、研究開始時には想定していなかったダイナミックな描像が明らかになり、分布の時間変化や力学非平衡も考慮した精細な放射モデルを構築する必要に迫られた。この工程が、本研究の主旨に沿った新たなサイエンス成果 (論文3本) に繋がったが、当初の計画の完遂と論文執筆に対する遅延の原因となった。当初の予定通り、「あかり」中間赤外線全天マップを完成し、次年度に回した予算で、論文出版・国内・国際学会での発表、を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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