研究課題/領域番号 |
26707009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上島 考太 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80605379)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二重ベータ崩壊探索 / 希ガス / 暗黒物質探索 / シンチレーション光 |
研究実績の概要 |
希ガスを用いた暗黒物質探索、太陽ニュートリノ観測、キセノンを用いた2重ベータ崩壊探索実験が行える多目的検出器の研究開発を行う。光センサーの放射性不純物によるバックグラウンドが問題となるため、光センサーを直接希ガスに浸すのではなく、光センサーを希ガスから遠ざけて、超低バックグラウンドな環境にする必要がある。 今年度は開発した直径4cmのTPB波長変換剤を溶かし込んだプラスチックシンチレータ容器の-100℃での低温特性を評価し、-100℃でも真空を保持でき、またプラスチックシンチレータ容器内に液体キセノンを導入することに成功した。研究当初は開発してきたアクリル容器に波長変換剤を蒸着した容器をさらに大型化しようと試みたが、液体キセノンを入れる容器をプラスチックシンチレータにすることで、エネルギー付加による不感領域がなくなり、様々な暗黒物質探索実験の検出器で問題となっている検出器表面のバックグラウンドを低減できる可能性が大きいためプラスチックシンチレータ容器を用いて研究を進めた。液体キセノンのシンチレーション光の波形とプラスチックシンチレータのシンチレーション光の波形を区別できることを実証した。 また直径20cmのプラスチックシンチレータ容器を内装するための、ネオン、アルゴン、キセノンを液化するクライオスタットを設計し、25Kまで十分冷やせる能力があるクライオスタットを開発した。今後直径20cmのプラスチックシンチレータ容器を開発し、液体ネオン、アルゴン、キセノンを入れ同じ検出器で3種類の希ガスを用いてシンチレーション光を観測できる事を示していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直径20cmのプラスチックシンチレータ容器の開発は少し遅れ気味だが、開発の目処はたっており、研究は順調に進んでいる。また昨年度はプラスチックシンチレータのシンチレーション光波形とその中に導入した液体キセノンのシンチレーション波形を区別できる事を示し、またネオン、アルゴン、キセノンを液化できるクライオスタットの設計は終っており、冷凍機の試験も終了している。本年度のネオン、アルゴンの液化試験、シンチレーション光の読み出し試験に向けて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初アクリル容器に波長変換剤を蒸着した直径20cmの大型容器を開発しようとしたが、TPB波長変換剤に含まれる放射性不純物や、容器内面に付着したラドン起源のバックグラウンドを低減させる必要があり、昨年度は液体キセノンをプラスチックシンチレーター容器に導入し、プラスチックシンチレータのシンチレーション光波形と液体キセノンのシンチレーション光波形を区別することに成功した。この結果により検出器表面のバックグラウンドを大幅に低減できる可能性が出てきたため、今後直径20cmの大型プラスチックシンチレータ容器を開発し、容器内に液体ネオン、アルゴン、キセノン、3種類の希ガスを入れ、それぞれの希ガスのシンチレーション光を可視光として読み出せることを実証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型プラスチックシンチレータ容器の開発費にあてるため使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
大型のプラスチックシンチレータ容器の開発、希ガスのシンチレーション光測定装置の開発に使用する。
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