希ガスを用いた暗黒物質探索、太陽ニュートリノ観測、キセノンを用いた二重ベータ崩壊探索が行える多目的検出器の研究開発を行なった。現在の暗黒物質探索実験では多量の希ガスを用いて、探索領域を検出器中心部のみに限定している。希ガス全体を極低バックグラウンド化するには、光センサーの放射性不純物によるバックグラウンドが問題となるため、光センサーを直接希ガスに浸すのではなく、光センサーを希ガスから遠ざける必要がある。希ガスのシンチレーション光は波長が真空紫外領域であるため、遠ざけた光センサーで読み出すには波長変換剤を用いて可視光に変換する必要がある。 本年度はプラスチックシンチレーターの耐有機溶剤試験を行なった。恒温槽でリニアアルキルベンゼン(LAB)にプラスチックシンチレーターを浸し試験を行ったところ、プラスチックシンチレーターがLABに溶け出した。このため薄い発光性のフィルムでプラスチックシンチレータ容器の外側をコーティングする必要があると判明した。すでに耐有機溶剤の薄い発光生フィルムは開発されており、今後耐有機剤対策を行う。 また昨年度アクリルパイプが強度不足であると判明していたが、アクリルパイプの肉厚を増やし、プラスチックシンチレータ容器との接続箇所の強度を増すことに成功し、波長変換効率の良いTPB波長変換剤を0.5%溶かし混んだポリビニルトルエンベースのプラスチックシンチレータ容器の開発に成功した。今後開発したプラスチックシンチレータ容器をクライオスタットに導入し、ネオン、アルゴン、キセノンのシンチレーション光を可視光に変換し、光センサーで読み出し、検出器全体を極低バックグラウンドな状態にできるか評価していく。
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