研究課題/領域番号 |
26707011
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
常定 芳基 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50401526)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 原子核組成 |
研究実績の概要 |
宇宙線が大気中に入射して発生する空気シャワーから放射される「空気チェレンコフ光」を検出するための装置「チェレンコフ検出器」を開発し、米国ユタ州の「テレスコープアレイ」実験サイトへ設置し、観測を開始した。この実験により、エネルギー10^16電子ボルト領域の宇宙線の原子核組成を測定し、銀河系内起源と銀河系外起源の宇宙線のエネルギー境界を明らかにすることを目指す。
平成28年度は、まず業者に発注して完成が遅れていた「波形収集装置」の校正を完了させ、光センサである光電子増倍管との組み合わせによって設計どおりの光検出能力を有することを確認した。またチェレンコフ光イベントの到来時刻を決定するためのGPSと200MHzクロックによる時刻スタンプ精度を検証し、異なる検出器に同時に入射した信号の時刻のずれが20ns以下に収まることを確認した。これは空気シャワーの到来方向決定精度に対する要求を十分に満たすものである。
さらに共同研究を行なっているユタ大学と協力し、モーターによる自動開閉窓を備えた検出器収納箱を製作し、日本から輸送した派遣収集装置、光電子増倍管、太陽電池パネルなどとともに、検出器の組み立てを行なった。検出器には気温、気圧、湿度センサを組み込み、チェレンコフ光信号とともに環境データも同時に取得できるようなデータ取得プログラムを開発した。そしてユタ州におけるテレスコープアレイ実験サイトへ検出器群を設置した。検出器と観測オペレータの通信には無線LANシステムを利用するが、これが距離1km以上離れていても動作することを確認した。そして試験データを取得し、確かに空気シャワーイベントに付随するチェレンコフ光信号が取得できていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検出器開発における心臓部である「波形収集装置」の製作を業者に依頼していたが、その完成が1年以上遅れたことにより、その後の検出器校正や米国への輸送、検出器設置とデータ収集開始に遅れが生じた。実際に波形収集装置完成以後の進展速度は、業者による装置完成の遅れがなかった場合と同じペースであるが、研究全体としてはやや遅れが生じている。4年間の間に予定していただけの観測時間を確保することはできなくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
設置したチェレンコフ光検出器を運用し、データ収集を続ける。データ収集においては、光電子増倍管のゲインを決める高電圧の値や、観測の自動開始終了プログラムには改善の余地があり、米国ユタ大学の共同研究者と協力しながら、検出器運用システムの最適化を進める。データ解析は日本側と米国側で緊密な連携をとりつつも半独立に行い、相互チェックしながら進める。2年に1度開かれる「宇宙線国際学会」(ICRC, 釜山)において進捗状況と初期結果について報告予定。日本物理学会でも報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国ユタ州実験サイトへの旅費として使用予定であったが、同じサイトで別予算(特別推進研究)にて行われている実験での出張が生じ、それに合わせて当研究の業務も行えることになったため、当研究の研究費による旅費支出がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年夏の米国ユタ州実験サイトへの旅費として使用予定。
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