研究課題
本研究課題の対象物質である非クラマース系PrIr2Zn20の反強四極子秩序の秩序変数を微視的に同定した。前年度に行った磁場[110]方向に引き続き、今年度は磁場[100]方向における中性子回折実験をフランスのレオン・ブリルアン研究所にて行った。これらの結果から磁場誘起の反強磁性構造を明らかにし、主要な秩序変数が四極子のO22であると結論付けた。PrIr2Zn20の非フェルミ液体状態について、Znサイトの元素置換効果を調べた。これまで、Ga置換による化学圧力効果により、非フェルミ液体状態の特性温度が上昇することを明らかにした。今回、Cd置換による負の化学的圧力効果により、特性温度が下がることを見出した。この結果は、非フェルミ液体的挙動が、元素置換による非磁性基底二重項の分裂よりも、c-f混成の強度に依存しており、四極子と伝導電子の強い相互作用に起因することを強く示唆する。また、熱膨張と磁歪の測定をアウグスブルグ大学で行い、四極子秩序が消失する磁場[100]方向の5T付近で大きな異常があることを見出した。熱電能や弾性定数の異常ともよく対応することから、四極子と伝導電子の相互作用による格子異常が発現したと考えられる。一方、PrIr2Zn20のPr希薄系においては、Pr組成が薄くなるとともに単サイトの非フェルミ液体的挙動が生じることを、比熱と電気抵抗の測定から明らかにした。それぞれの温度依存性が単サイトの四極子近藤効果の理論モデルとよく符合することから、四極子と伝導電子の強い相互作用の存在を示唆する。これまでの非クラマースPr1-2-20系に関する実験結果を系統的にまとめ、関連する理論モデルによる解釈を含めた論文がJ. Phys. Soc. Jpn.に招待レビュー論文として掲載された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 86 ページ: 034707-1-6
10.7566/JPSJ.86.034707
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Phys. Rev. B
巻: 94 ページ: 075134-1-8
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