ソフトマターは大きさの異なる階層構造を持っており、その階層間の動的結合により、メゾスコピックなパターン構造を形成する。これまでは空間均一場におけるパターン形成が研究されてきたが、まだほとんど研究されていない空間不均一場に注目した。不均一場は不均一系特有な効果があり、それらの効果とパターン形成が結合することにより、均一系では見られない新規のパターン構造が出現すると期待した。そこで、空間不均一場におけるソフトマターのパターン形成を実験的に調べ、メカニズム解明を目的とした。 (1)ソフトマターの熱対流現象、(2)コロイドの樹枝状凝縮パターン形成、(3)泡沫の崩壊ダイナミクス、(4)イオン液体の異常溶解について研究を行った。(1)は通常の熱対流に対して、ソフトマターの自由度、例えば、粘性の温度依存性が絡み合い、特異な熱対流状態がみつかった。(2)は一様な凝縮ではなく、トリガーを導入することによって、樹枝状パターンが形成されることを見出した。(3)では、経験的に2つに分類されていた泡沫の状態が実は3つに分類され、それぞれが力学特性と結びついていることを見出した。(4)では、イオン液体が水に溶解するとき、一方向拡散という特異な溶け方であることを見つけた。 それぞれのテーマはソフトマターの中でも異なる物質であるが、非平衡物理としてとらえると類似性が多く見つかった。それぞれにおいて、興味深い結果が得られ、論文に掲載されている。この課題の発展は、非平衡物理に大きく貢献できるものと考えている。
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