地球シミュレータ用海洋大循環モデルOFESを用いた1980年1月から2013年12月までの34年間の準全球渦解像長期シミュレーションの3日毎出力を解析し、爆弾低気圧がその直下の海洋に及ぼす影響を調査した。上記期間の12月から3月の間で北西太平洋上の爆弾低気圧活動が最大であった東経165度、北緯42.5度で発達した爆弾低気圧76事例についてコンポジット解析を行い、海洋に励起される鉛直流が2000m深まで有意に現れる一方、表層の水平発散は60m深の海洋混合層内に限定されることを明らかにした。また、海底から2000m深までの深層には低気圧性の水平循環が励起されることも発見した。さらに、2011年1月の1時間毎出力を元に1月17日に発達した爆弾低気圧の事例解析を実施し、5000m深に達する湧昇流と水温変化が海洋内に励起されることを明らかにした。一方、1月に顕著な北西太平洋域の爆弾低気圧活動の年々変動に対する海洋応答を解析し、爆弾低気圧活動の年々変動が引き起こす風応力回転成分の年々変動に伴って、海洋深層で日スケールの鉛直流、水温変動振幅の年々変動が現れることを明らかにした。以上の解析結果はGeophysical Research Lettersに投稿し、受理掲載された。一方、昨年度の海中投入後に不具合が生じた2台のフロートのメーカー補償品として新たに納入されたイリジウム通信型中層フロート2台を研究協力者の海洋研究開発機構(JAMSTEC)細田滋毅グループリーダー代理の協力により北西太平洋域に投入し、延べ446回のプロファイル観測と、うち19回の爆弾低気圧の通過時の観測を行った。
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