現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は以下の3つの研究を予定していた. ①野外調査 平成26年度に採取した美濃帯(岐阜県坂祝町)の三畳系~ジュラ系チャートに加えて,同地質帯のペルム系層状チャートを採取する. ②蛍光X線分析装置によるCr, Ni定性定量分析 ①得られた約1000試料の粘土岩について,粉末試料を作成し,蛍光X線分析を用いた元素分析を行なう. ③白金族元素の定量分析 イジェクタ層の可能性があると判断された試料については,隕石中に豊富な白金族元素(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)の濃度を調べる. 当該年度は,①については平成26年度に加えてペルム系層状チャート試料を採取,分析した.②については平成26~27年度に採取した膨大な量の岩石試料(1200試料)について分析用粉末試料の作成と蛍光X線分析が順調に進んでいる.③についてはイジェクタ層の候補に対してOs同位体分析を行った.また従来報告されているイジェクタ層についても白金族分析を行い,衝突天体の起源を明らかにすることができた.この成果については論文として報告した(Sato et al., 2016).以上の研究の進捗状況から,現在までの研究の達成度は良好であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究結果をふまえて,平成28年度は以下の4つの研究を行う. ①野外調査 平成27年度に採取した美濃帯(岐阜県坂祝町)の三畳系~ジュラ系チャートに加えて,同地質帯の中部ペルム系層状チャートを採取する. ②蛍光X線分析 ここでは平成28年度に加えて得られる約600試料について,粉末試料を作成し,蛍光X線分析装置を用いた元素分析を行なう. ③白金族元素の定量分析,Os同位体分析 イジェクタ層の可能性があると判断された試料については,隕石中に豊富な白金族元素(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)の濃度を調べる.分析はこれまでの研究と同様に,放射化分析とNi-fire assay法による誘導結合プラズマ 質量分析装置(ICP-MS)を用いた白金族元素濃度の定量分析を行なう.イジェクタ層と判断された試料について,オスミウム同位体分析を行い,隕石衝突の強固な証拠を得る.オスミウムは,複数の同位体を持ち,地球に落下する大部分の隕石が,高いオスミウム濃度と低いオスミウム同位体比(187Os/188Os)を持つことが知られている.海洋研究開発機構のマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析装置(MC-ICP-MS)を用いて,オスミウム濃度と同位体比の変動を調べる. ④隕石衝突履歴の解読 イジェクタ層と判断された試料については,上下層準のチャートから微化石用の試料を採取する.フッ化水素酸法で放散虫・コノドント化石を抽出し,属種の同定および隕石の衝突年代を明らかにする.さらに隕石衝突がこれらの化石群集に与えた影響を将来的に調べるため,衝突を記録した層準を挟んで化石層序も明らかにする.
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