研究課題/領域番号 |
26707028
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
浅海 竜司 琉球大学, 理学部, 准教授 (00400242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 古環境 / 古気候 / 石筍 / サンゴ / 第四紀 / 完新世 / モンスーン |
研究実績の概要 |
地質試料を用いた古気候解析は,地球環境変動を理解するうえで重要な手法の一つである.近年では,中国を中心に,石筍を用いた第四紀の気候変動解析(例えば,アジアモンスーンなど)に関する知見が蓄積されつつあるが,琉球列島においては完新世の環境変動を代表する石筍データは得られていない.そこで,本研究では,琉球列島の複数の石筍について化学分析を実施し,完新世における琉球列島の陸域環境(気温,降水量)の長期時系列データを抽出し,サンゴなどの海洋プロキシデータとの解析から大気-海洋間の変動史を復元することを目的としている. 2016年度は,2015年度に引き続き,琉球列島の鍾乳洞(沖縄島,沖永良部島の2島7鍾乳洞)において洞窟管理者の許可を得て定期現場調査を実施し,ロガーによる洞内環境(気温,湿度など)の連続観測,二酸化炭素濃度計測,環境水・石筍試料の採取などを行った.複数の石筍試料について,切断・整形・研磨を行い,X線画像の縞構造解析,化学分析,年代測定を行った.その結果,石筍試料の形成年代は最終氷期~完新世~現在のタイムレンジにあり,本研究の目的に適することを確認した.また,安定酸素同位体組成ならびにレーザーアブレーションICPなどの化学分析から過去の陸域環境の推定を試みた.以上の野外調査ならびに化学分析の解析結果,ならびに比較対象とするサンゴなどの海洋プロキシの解析結果は,一部を国内外の学会や学術雑誌で発表した.また,2014-2016年度の研究成果をとりまとめ,2017年度の国内外の学会など(例えば,JpGU-AGU Joint Meeting 2017など)で発表し,国際学術雑誌に投稿する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,概ね2016年度研究実施計画どおりに進められた.具体的な理由は,1)琉球列島における異なる2地点(沖縄島,沖永良部島)の複数の鍾乳洞において,現場観測を2014年度より継続的に実施できたこと,2)鍾乳洞管理者の許可を得て,多数の石筍試料を採取することができたこと,3)試料の各種実験と化学分析(安定同位体組成分析,レーザーアブレーション微量元素分析,ウラン系列年代測定など)を順調に推進することができ,本研究目的に合致する多くの基礎データが得られたこと,4)比較対象とするサンゴ年輪データの蓄積と解析が進展したこと,5)成果の一部を国内外の学会や国際学術雑誌で発表したことや,2017年度に開かれるJpGU-AGU Joint Meeting 2017で成果を発表する予定であること,である.以上のように,各種研究項目で膨大な実験データが蓄積されたことや,成果を定期的に発信できていることから,本研究は概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
基本的に2017年度の研究実施計画どおりに進めていく予定である.定期的な野外調査,採取試料の各種化学分析を推進し,年度上半期を目処に全てのデータを取得する予定である.特に,分析値の高精度時系列データを構築するために,ウラン系列年代測定を精力的に推進する.年度下半期は得られた実験データの整理と解析を進め,成果を国際学術雑誌に投稿するとともに,国内外の学会で発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国立台湾大学(台湾)への出張と放射性炭素年代測定依頼のスケジュール調整が上手く合わず,次年度上半期に予定を変更したため.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度上半期(4~6月を予定)において,国立台湾大学への出張旅費と放射性炭素年代測定依頼費に使用する予定である.
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