地質試料を用いた古気候解析は,地球環境変動を理解するうえで重要な手法の一つである.近年では,中国を中心に,石筍を用いた第四紀の気候変動解析(例えば,アジアモンスーンなど)に関する知見が蓄積されつつあるが,琉球列島においては更新世後期~完新世の環境変動を代表する石筍データは得られていない.そこで,本研究では,琉球列島の複数の石筍について化学分析を実施し,サンゴの海洋プロキシデータとの解析から大気-海洋間の変動史を復元することを目的としている. 2018年度は,本研究課題事業の最終年度(1年延長申請済み)にあたり,石筍の追加分析ならびにデータ解析,成果発表,学術論文の執筆を行った.琉球列島(石垣島,沖縄島,沖永良部島)の複数の鍾乳洞において観測モニタリングした洞内環境データ(気温,湿度,二酸化炭素濃度,環境水など)の解析,複数の石筍試料の分析から得た安定酸素炭素同位体組成の高時間解像度時系列データの解析と石筍包有水の追加分析を行い,更新世後期~完新世における琉球列島の陸域環境(気温,降水量)の長期変動を復元することに成功した.サンゴの海洋プロキシデータとの解析では,完新世における大気-海洋の数年~数十年変動の類似性と相違性を見出すことができた.以上の成果は,国内外の学会で発表した(計15件).また,本研究事業期間(2014-2018年度)の研究成果は,2019年度のJpGU Meeting(日本地球惑星科学連合大会,2019年5月)などでも発信し,学術論文としてまとめて国際学術雑誌に発表する.
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