研究課題
超高温の地球中心から地表までの間に存在する大きな熱勾配は融体金属からなる地球外核とマントルの対流を引き起こし、地磁気の生成やプレート運動などの地球のダイナミズムの原動力となっている。電気伝導度・熱伝導率は地球内部の熱構造と熱進化を知るための基礎的な物理量であるにもかかわらず、実際の地球中心核条件での測定例は殆ど存在しない。本研究の目的は高温高圧実験によって地球の核を構成する鉄ー軽元素合金の電気伝導度を実際の地球中心核の温度圧力条件で行い、地球中心核の電気伝導度及び熱伝導率構造を明らかにすることである。平成26年度は地球中心核の主成分である純鉄を対象試料とし、研究を行った。レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いて、純鉄の電気抵抗率(電気伝導度の逆数)測定を地球中心核条件に相当する160万気圧、4500ケルビンまでの条件で行った。地球中心核に相当する温度圧力条件において、純鉄の電気抵抗率の測定に成功したのは本研究が初めてである。この実験は大型放射光施設SPring-8を利用し、電気抵抗率測定と同時に試料の結晶構造解析も行っている。そのため、純鉄の電気抵抗率の相転移による変化を精密に決定することが可能となっている。その結果、本実験によって純鉄の電気抵抗率が圧力、温度、相転移によってどう変化するのかを定量化することが出来た。この結果は、翌年以降に鉄-軽元素合金の電気抵抗率測定を行う際に基礎的データとして非常に有用である。本研究の結果は3件の学会で発表を行った。うち2回は国際学会における招待講演である。またこの研究成果を論文としてまとめ、科学雑誌Natureに投稿した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度の交付申請書内で設定した研究実施計画で目標にしたゴールは、純鉄の電気抵抗率の温度、圧力、相転移依存性を地球中心核に相当する条件下で行うことであった。上の研究実績の概要に記載したとおり、当初の計画は達成したと言える。また、平成27年度以降の研究課題であった鉄―軽元素合金の高温高圧下電気抵抗率測定にも昨年度末から既に着手している。そのため、現在までの研究の達成度は計画以上に進展していると考えられる。
平成26年度の研究によって、純鉄の電気抵抗率の温度・圧力・相転移依存性が明らかになった。地球中心核は純鉄の他に少量の軽元素(珪素、硫黄、酸素、炭素、水素)が含まれていると考えられている。これらの軽元素が純鉄の電気抵抗率に与える影響を明らかにすることは地球中心核の電気抵抗率を推定する上で重要な研究である。交付申請書に記載した平成27年度の計画では、鉄-ニッケル合金の電気抵抗率測定を行った後に、鉄―軽元素合金の研究に着手するとしていた。しかし、すでに鉄-ニッケル合金においては先行研究が存在することから、今年度は鉄-軽元素合金の電気抵抗率測定に着手したい。研究代表者に加えて、2名の学生も研究の協力者とする。それぞれが1元素ずつを担当し、鉄―硫黄合金、鉄―酸素合金、鉄-水素合金の電気抵抗率測定を地球中心核に相当する温度・圧力条件で行うことを目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
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