地球中心核の主成分である純鉄の電気抵抗率を212万気圧、4500 Kの条件まで測定することに成功し、得られた結果から中心核の熱伝導率と熱進化を議論した学術論文をNatureに発表した。この結果に加えて、同じ純鉄試料の熱伝導率測定を高温高圧条件下で行った。研究代表者の行った、同一試料での電気抵抗率・熱伝導率測定結果から、金属の電気抵抗率と熱伝導率の関係式であるWiedemann-Franz則の検証を行った。その結果は40万気圧、1500 Kにおいて純鉄にはWiedemann-Franz則が成り立たないことを示唆している。 地球中心核には純鉄だけでなく硫黄などの軽元素も含まれていると考えられているため、鉄硫黄合金の電気抵抗率測定を110万気圧まで測定し、硫黄が固溶することで鉄の電気抵抗率がどの程度変化するのかを定量的に見積もった。その結果、硫黄の固溶効果は同じく核の有力な軽元素候補であるケイ素よりも小さいことがわかった。これまで、鉄硫黄合金の電気抵抗率は常圧条件においても測定された例はなく、本研究によって初めて鉄硫黄合金の電気抵抗率が明らかにされたといえる。硫黄は地球だけでなく、火星の中心核にも多く含まれていると言われているため、実験結果を用いて火星及び地球の中心核の電気抵抗率・熱伝導率構造の推定を行った。これは今後、地球や火星の熱進化を議論するうえで非常に重要な基礎データとなるであろう。
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