研究実績の概要 |
イオンチャネル、トランスポーター、ポンプなどの膜タンパク質の分子機構を理解するためには、機能発現に関わる分子構造の変化やダイナミクスに関する情報が重要である。 本研究では、液中での計測に有利な全反射赤外分光計測を駆使し、イオンや基質の結合に伴うタンパク質の構造変化を明らかにする。さらには、急速溶液交換法と組み合わせた計測により、様々なイオンや基質との相互作用やイオンチャネルにおけるゲート開閉、トランスポーターやポンプにおける物質輸送過程での構造変化など、タンパク質の動的な構造変化を明らかにする。具体的には、以下の研究テーマを設定した。1)イオン・基質透過経路でのイオン・基質との相互作用解析(低速溶液交換法)。2)急速溶液交換法によるイオン・基質の結合解離に伴う構造ダイナミクスの解明。 本年度は、1)に関連して、ほ乳動物由来のカリウムチャネルタンパク質であるTWIK-1について、高速原子間力顕微鏡による分子観察を行った。TWIK-1のWT, T118I変異体、cap構造を取り除いた変異タンパク質分子の大きさや高さについて観察と解析を行った。また、TWIK-1のイオン選択フィルター部位のカルボニル基の基準振動解析を行い、K+イオンを配位した振動モードの帰属を行った。これまでの研究成果をまとめ、J. Biol. Chem.誌に発表した。 2)に関連して、光駆動ナトリウムイオンポンプであるKR2について、Na+結合・解離の急速溶液交換実験を行い、Amide I領域でタンパク質の構造変化に由来するシグナルを得た。
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