研究課題/領域番号 |
26708004
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40525573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホウ素 / ボリニウムイオン / ルイス酸 / 超ルイス酸 / 小分子活性化 / ナノカーボン類 / カルボラン / ジボラン |
研究実績の概要 |
本研究では、単離可能な究極のルイス酸分子として、ホウ素が結合の手を二本しか持たない二配位ホウ素カチオン種「ボリニウムイオン」を開発し、既存のルイス酸では成しえない反応化学・物質科学を探求する。平成28年度は、前年度に引き続き、ボリニウムイオンの反応性の検討、およびボリニウムイオンの電子的性質の実験的解明へ向けた取り組みを行った。① ボリニウムイオンの量的確保へ向けたカルボランアニオンの効率的合成、② ボリニウムイオンを用いたカーボンナノチューブ薄膜へのホールドープと高電導化については論文としてまとめ、学術誌に報告した。また、研究の過程で偶然見出した、③ 芳香族ボロン酸エステル誘導体の室温、固体状態での長寿命燐光発光現象について論文発表を行った。さらに、新たなボリニウムイオン誘導体の単離に成功した。この新規ボリニウムイオンは、既存のボリニウムイオンに対して、二当量のジフェニルアセチレンを作用させた場合に、アセチレンがボリニウムイオンの二つのホウ素ー炭素結合に挿入することで得られる。すなわち、二配位ホウ素カチオンの化学反応により、新たな二配位ホウ素カチオンが生成するという、学術的に極めて興味深い成果を得た。加えて、ボリニウムイオンの還元反応により、ボリニウムイオン2分子間でホウ素ーホウ素結合形成反応が進行し、新規ジボラン(4)誘導体が得られることを見出した。このジボラン(4)誘導体は、テトラアリールジボラン(4)としては例外的に水、空気に安定であるとともに、特異な発光挙動を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記述したように、ボリニウムイオンの反応性および電子物性に関する検討は極めて順調に進行している。また、ボリニウムイオンを用いた、ナノカーボン類の高機能化について成果発表を行うことができた。さらに、重元素を含まないホウ素化合物の室温燐光発光挙動や、新規ジボラン(4)の特異な発光挙動の発見など、本研究では当初の研究計画を超えて、新たな発展研究が展開しつつある。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。 。
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今後の研究の推進方策 |
当初、本研究の研究期間は今年度までの予定であったが、ごく最近、ボリニウムイオンを用いて、単層グラフェンを高度にホールドープ可能であることを見い出した。これは、ITOに替わる透明導電膜の開発を始めとする、様々な応用展開へ向けた重要な知見であると考えられる。そこで、今年度の研究予算を一部平成29年度へと繰り越し、上記の研究課題を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中、研究期間終了間際に、ボリニウムイオンを用いて、単層グラフェンを高度にホールドープ可能であることを見い出した。これは、ITOに替わる透明導電膜の開発を始めとする、様々な応用展開へ向けた重要な知見であると考えられる。そこで、今年度の研究予算を一部平成29年度へと繰り越し、上記の研究課題を展開することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、ボリニウムイオンによるホールドープ単層グラフェンの電気伝導性、光透過性、大気安定性を検討するための実験に用いる。具体的には、有機合成用試薬、不活性ガス、重水素化溶媒および基板類、ガラス器具、消耗品に加えて、共同実験を実施および成果発表のための旅費、成果発信のための論文投稿費として次年度使用額を用いる。
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