研究課題/領域番号 |
26708005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 良太 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80453843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノシート / トポロジカル絶縁体 / 原子層 / 二次元物質 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
(1) SPMを用いた詳細な構造決定: これまでのところ、ナノシートと基板の二次元格子同士のモアレパターンの観測には成功しているが、ナノシートの直接構造の観察には至っていない。一方で、SPring-8におけるすれすれ入射X線回折(GIXD)によるナノシート積層体の構造解析に複数成功した。加えて、TEMの電子線回折像の取得にも複数成功している。 (2) STSを用いたエッジ部分の観察: 大気下STMを用いた測定を行い、エッジ状態と思しきナノシートのSTSマッピングが得られているものの、その確証までは至っていない。 (3) ナノシートへのドーピング: トポロジカル絶縁体としての駆動にはフェルミレベルの制御が必要となる。今年度には化学的または電気化学的な手法を用いてその制御が可能であることを見出した。その内容を一部として、学術雑誌に論文を発表した。 (4) 新しい金属錯体ナノシートの開発: 他の研究者の類似研究参画を受け、ジチオレン金属錯体ナノシートの有機配位子・金属イオンのバリエーションの拡張を行った。触媒機能など、トポロジカル絶縁性とは異なる興味深い物性を示すことを簡易的にではあるが発見した。加えて、光電変換能を示すジピリン金属錯体ナノシート、エレクトロクロミズムを示すテルピリジン金属錯体ナノシートといった、ジチオレン金属錯体ナノシートとは異なる金属錯体モチーフを有するナノシートの創製にも取り組み、学術雑誌に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SPMを用いた詳細な構造決定、STSを用いたエッジ部分の観察の進捗は芳しくはないが、ナノシートへのドーピングについてはJ. Am. Chem. Soc.誌に論文を発表するなどの成果が得られている。また、ナノシートのバリエーションについても順調に増加している。
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今後の研究の推進方策 |
ナノシートへのドーピングについては、化学的もしくは電気化学的な手法を確立しつつある。今後は静電的ドーピングについても、FETデバイスを作成するなどして知見を深めていく。SPMを用いた詳細な構造決定、STSを用いたエッジ部分の観察の進捗を加速するため、超高真空SPMが自由に利用できる環境の整備に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年12月、本研究と研究内容が近いジチオレン金属錯体ナノシートに関する研究成果が、他の研究グループより複数発表された。本研究遂行上、この研究成果を見極める必要があるので、新しい金属錯体ナノシートの考案および物性測定、構造決定を行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬・消耗品の購入費用として1670685円、博士研究員を1名雇用するための人件費として1500000円が必要である。
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