研究課題/領域番号 |
26708005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂本 良太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80453843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノシート / トポロジカル相 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
トポロジカル絶縁体とは、バルク部分は絶縁性だが、エッジ部分は偏極したスピン流を無散逸で伝達する、新規スピントロニクス材料として期待されている新物質群を指す。これまで無機物のみが知られていたが、筆者らが開発したジチオレン金属錯体ナノシートは有機系発の二次元トポロジカル絶縁体として振る舞うことが理論的に予測された。今年度はバリエーションの拡張を配位子側から行うアプローチを取った。具体的には、ヘキアアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノ-2,4,6-トリメルカプトベンゼンを合成し、NiまたはPdを中心金属としてジチオレン金属錯体ナノシート誘導体の創製を行った。得られたナノシートは伝導度や水素発生反応(HER)触媒活性を示すなど、多様な機能性も示した。次年度までに一部結果を投稿論文として発表する予定である。配位子の構造を根本的に見直した、新規金属錯体ナノシートの合成と機能創出についても一定の成果を挙げた。テルピリジン配位子を用いた亜鉛錯体ナノシートの優れた光捕集および光伝達能の解明、およびジピリン金属錯体ナノシートの光電変換材料としての応用に関して、論文を発表した。炭素炭素共有結合に基づく有機ナノシートの合成は、チャレンジングな研究領域である。筆者は、グラフェンの同素体であるとともに、ヘキサエチニルベンゼンの酸化的多量化によって合成可能な分子性ナノシートでもある、グラフィジインの精密合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ナノシートに関する論文を複数、高IF学術雑誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ヘキアアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノ-2,4,6-トリメルカプトベンゼンを用いた金属錯体ナノシートの物性評価を進め、論文化する。また、グラフィジインについてもトポロジカル相の発現に関して理論実験の両面から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年12月、導電性AFM測定の結果、ジチオレンナノシートが、当初の予想に反し、スーパ ーキャパシタの活物質層として機能しうることが明らかとなった。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、スーパーキャパシタの活物質層への応用ならびにリチウム電池活物質層への応用を追加で実施する必要が生じ、8ヶ月の研究期間延長を要する。物品費に該当するヘキサブロモベンゼンなどナノシート合成用試薬・ケッチェンブラックなど電池セル構築用試薬、ガラス器具、合成・洗浄用溶媒などの費用、廃棄物処理代および論文の英文校正費用に利用する予定である。
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