研究実績の概要 |
今年度はジチオレン金属錯体ナノシート誘導体の物性を明らかにした. 1,3,5-トリアミノ-2,4,6-トリメルカプトベンゼンを配位子とするナノシートは, 酸化体と還元体を作り分けることができる. 酸化体は還元体に比べ優れた電気伝導度を示す一方, 還元体は水素発生反応 (HER) の電極触媒として機能することを見出した. 本内容を論文として発表した. ヘキサアミノベンゼンを配位子とするナノシートについても電気伝導度を確認し, 論文にまとめた. 有機系トポロジカル物質への新展開として, 筆者が昨年報告したグラフェンの同素体であるグラフィジインについて研究進展があった. グラフィジインは二次元ナノカーボンであるとともに, ヘキサエチニルベンゼンの酸化的多量化によって合成可能な分子性ナノシートでもある. 筆者は昨年度, 液液および気液界面法によるグラフィジインの精密合成を発表した. 質の良いサンプルをもとに, X線および電子線回折法により, これまで未解明だったグラフィジインの積層構造を層が互いにずれて重なったABC構造であることを明らかとした. この積層構造をもとに, 物理学者と共同で理論計算を行い, ABC積層グラフィジインが適切なドーピングのもとでトポロジカル線ノード半金属として振る舞うことを予測した. 加えて, グラフィジインのバリエーションの拡張として, トリフェニレンをコアとする誘導体の合成に成功し, 論文として報告した.
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