研究課題/領域番号 |
26708006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552652)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 固液相転移 / ガラス / イオン伝導 / ガス吸着 |
研究実績の概要 |
本研究では金属イオンと架橋性配位子から組み上がる配位高分子において、これまで研究されていない液相を利用した機能化学を目的とし行った。安定な液相を有する新規配位高分子を合成するため、Zn2+イオン、Cu+イオンを主に用い各種検討を行ったところ、アニオンとしてSCN-やTFSI-を有する際に融解挙動が多く見られる事がわかった。これまで約10種類の新規融解性配位高分子の合成に成功した。 またこの一部を用い、融解状態を利用した機能発現を検討した。具体的にはZn2+イオン、リン酸アニオン、イミダゾールを有する一次元配位高分子の液相(165℃)において、各種ドープ分子を導入し、冷却しガラス化あるいは再結晶化することによる複合体合成を行った。硫酸をドープ分子として導入した際はドープなしと比べ、1.5桁のプロトン伝導度の向上が確認された。また8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonic acidは光照射のオン・オフでプロトンの放出と再結合を制御できることが知られているが、本分子をドープしたのち、ガラス状態で紫外光のオン・オフによってプロトン伝導性のスイッチングができるかを検討したところ、可逆的かつ繰り返し性を有するプロトン伝導特性を有するガラス相であることが確認された。 以上のように、本年度では(1)主にZn2+イオン、Cu+イオンからなる配位高分子の一部が系統的に融解挙動を示しうることを合成によって指し示した。この熱的挙動は含有アニオンに大きく依存することが分かった。(2)融解挙動を利用し、高いイオン伝導性複合体やイオン伝導性スイッチ材料を調整できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の集中的な融解性配位高分子の合成により、約10種類の新規化合物ライブラリを得ることができ、同時にどのような要素が融解性の有無を決定づけるかの知見を得ることができた。また融解性配位高分子が既存の配位高分子と機能、応用の面でどう異なり、どのような特徴を有するかをドープ手法を用いて具体的に提示することに成功した。すなわち基礎的な分子設計および機能についても新規性高い成果が得られたことから、順調に進展していると結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでまだ明らかになっていない、配位高分子結晶の融解状態(液相)の構造を明らかにすることが重要であり、温度可変XAS、固体NMRを併用し、どのような液体状態構造を有するのかを明らかとする。また結晶―液相―ガラス相を可逆的に取り、かつイオン伝導以外の機能を有する配位高分子、すなわち例えばガス吸着能や磁気特性を有する化合物の合成と機能発現が本研究の基礎から応用への広がりにおいて不可欠であるため、さらなる新規構造の合成を進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を確実に遂行するために当初導入を予定していた装置の仕様策定に時間がかかり、今年度に急ぎ導入するとリスクを生じることが分かったため、次年度に予算を繰り越し、確実な仕様として導入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度速やかに当該装置(嫌気下合成装置)の仕様を決定し、導入する予定である。
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