研究課題/領域番号 |
26708007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 鉄兵 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10404071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン伝導 / 配位高分子 / 交流インピーダンス |
研究実績の概要 |
これまで我々は、水分子を含む水素結合ネットワークを配位高分子のナノ細孔内に形成することで高いプロトン伝導性が発現することを見いだしてきた。その中で、水分子がディスオーダーすることで高プロトン伝導性を発現していることが示唆されていた。 そこで、ベンゼンとほとんど同じ構造でプロトン供与能があるピリジニウム(C5H5N-H+)を水素結合ネットワークに導入することで、水素結合のディスオーダーを意図的に導入した。 アニオン性骨格を有する配位高分子[Zn2(ox)3]にピリジニウムイオンを導入した(HPy)2[Zn2(ox)3](H2O)nを合成し、構造解析およびイオン伝導性を評価した。(HPy)2[Zn2(ox)3]は、低湿度で水を1.3分子吸着し、吸着した水分子が細孔内でディスオーダーしていることがわかった。まだ水吸着に伴い、プロトン伝導度は2.2 × 10-3 Scm-1程度の値を示した。興味深いことに、無水物の結晶構造においては細孔に取り込まれたピリジニウムイオンのN-H結合は骨格のシュウ酸イオンと水素結合しており、ディスオーダーは全く見られなかったのに対し、水を吸着した(HPy)2[Zn2(ox)3](H2O)1.3においては、水分子が2サイト間でディスオーダーしている上、2つのピリジニウムイオン間を架橋したAサイトと、片側のピリジニウムイオンとだけ結合しているBサイトとの2つのサイトがあることがわかった。さらにピリジニウムイオンもディスオーダーしており、水分子がAサイトにいるときとBサイトにいるときとで約30度回転した2つの安定位置があることがわかった。これらのことは、水分子が運動しており、それに伴ってピリジニウム環が回転していることを示唆している。この水分子と連動したピリジニウムイオンの回転運動により、プロトンが送達されることで高いプロトン伝導性が発現したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細孔中でのイオンの運動について、新たなコンセプトを創り出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の成果により、水分子のディスオーダーを積極的に導入することで高プロトン伝導性が発現できるという、新しいプロトン伝導体作成のコンセプトを示すことに成功した。 今後はプロトンでは無く、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンや、マグネシウム、カルシウムと言った多価金属イオンを導入し、そのイオン伝導性を評価することで、プロトン以外の金属イオンの伝導挙動について評価を行う。 これら金属イオン伝導体を構築することで、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池といった二次電池向けの固体電解質の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた装置の購入に時間がかかり、事務手続きが間に合わないと判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
インピーダンス測定装置システムの購入に充てる予定である。
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