本年度は配位高分子を正極に用いたこれまでの配位高分子(MIL-100(Fe)、MIL-101(Fe)およびFemel)について、リチウムイオン電池、マグネシウム電池およびガリウム電池を作成し、その特性についてより詳細な評価を行った。 具体的にはレート特性やサイクル特性の評価を行い、サイクリックボルタンメトリー法により酸化還元電位を見積もり、充放電に伴う配位高分子の変化について詳細に検討した。また細孔内に取り込まれた金属カチオンについても評価した。サイクル特性については、リチウム電池およびマグネシウム電池では良好なサイクル特性が得られる一方、ガリウム金属電池については数サイクルで劣化することが明らかになった。またレート特定についても、リチウム電池・マグネシウム電池共に良好である。特に1Cという実用レベルの充放電速度において、マグネシウム電池の充放電容量が過去の他の材料を用いた際の報告例と比較して高い値を示した。このことは、多孔性材料を用いたことで、細孔内でのマグネシウムイオンの拡散が早くなったことに起因すると考えられ、マイクロ孔のイオニクスが、応用上重要であることを実証した例であると考えられる。 また配位高分子に電子伝導性を付与することを目的として、混合金属の配位高分子の合成も行った。MIL-100(Fe)にクロムイオンを10%程度ドープして電子伝導性を測定したが、純粋なMIL-100(Fe)と比較して優位な伝導度の向上は見られなかった。 また熱安定性についても評価を行った。配位高分子は熱的には極めて安定であり、コバルト酸リチウムなどの正極材料で見られる熱暴走の心配は全くないことがわかった。
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