近年、インクジェット方式を基盤とした3Dプリンティング技術が目覚ましく進歩している。工程の簡易化・製造装置の小型化が可能であり、従来の真空プロセスを経ないためコスト面においても大幅な生産性の向上が期待できる。しかしながら、ナノオーダーからの微細凹凸構造を精密・周期的かつ簡便に付与できる立体造形技術は未だ達成されていない。本研究では微細凹凸構造を有する弾性薄膜の自発的フォールディング(薄膜の三次元折りたたみ)を利用して、薄膜内に自動内包された液滴を光硬化させると同時に、凹凸構造を転写するという全く新しいタイプの3D光造形技術の確立を目指した。このフォールディング挙動はpHや温度などの外部刺激により誘発することも可能であり、内包物のリリースやマイクロロボットとして応用されている。しかしながら、内包物を固化し、同時に、その表面へ薄膜の構造を立体転写するというコンセプトは皆無である。本系では、長軸立体伸張により形成したストライプ(正弦波)状リンクル構造を鋳型微細凹凸構造として適用した。 今年度は、これまで手動で行ってきた伸長操作を自動化してリンクル形成のプロセスの効率化を図った。このプロセスにより得られるリンクルの波長・振幅は薄膜の伸張率に依存しており、伸張率の変化に伴う表面積や表面自由エネルギ-、薄膜の曲げエネルギー変化をそれぞれ算出することで、フォールディング挙動とリンクル構造の相関性を検討した。
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