研究課題/領域番号 |
26708016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 准教授 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 有機化学 / フラーレン / 自己組織化 / 超分子化学 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
金ナノ粒子は単独でも触媒能や光熱変換など数多くの機能を持ち,さらに粒子同士を空間的に近づけて集積化させることにより,粒子間のプラズモンカップリングに由来した長波長光吸収など更なる機能発現が可能である.この性質は薬剤輸送システムを志向した外部刺激応答性のナノカプセルを創製する上で重要である.これまで,脂質ベシクル表面への金ナノ粒子の集積を介した有機無機ハイブリッドナノカプセルの合成が試みられてきたが,ナノ粒子の結合による膜の不安定化,融合などの問題があった.本研究では,疎水表面をもつ水溶性フラーレン二重膜ベシクルを土台として,界面活性修飾を施した金ナノ粒子の集積化プロセスを,透過および走査電子顕微鏡を用いて追跡し,表面置換基の最適化によりベシクル表面における金ナノ粒子の協同的自己集積化が実現できることを見いだし,直径30ナノメートルの安定なハイブリッドベシクルを得ることに成功した.単粒子レベル分解能での電顕観察により,金粒子の自己集積化挙動は粒子表面のオリゴエチレンオキシド鎖長が大きく影響することが明らかとなった.すなわち,中程度の鎖長の場合はベシクル・粒子間相互作用と粒子・粒子間相互作用が同程度に強いため,金粒子は協同的にベシクル表面に結合し,結果として安定なベシクルが得られた.一方で,より長い鎖長では親水性が増すため粒子間の相互作用が弱まるため,集積化は非協同的に起こり安定化への寄与が弱く,ベシクル同士の融合もみられた.協同的に集積化した金ナノ粒子・ベシクルハイブリッドについては,粒子単独の場合よりも高い酸化反応への触媒活性を示した.また,金錯体の添加によりベシクルに結合したまま金粒子のサイズを大きくすることが可能であることも見いだした.粒子径を大きくしたハイブリッドではプラズモンカップリングが増大し,緑色レーザー光に応答したベシクルの崩壊が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フラーレン二重膜ベシクルと金ナノ粒子の複合体形成反応を取り上げて「一つ一つの集合体を取り出して電子顕微鏡観察し,その生成機構を明らかにする」という当初目標を達成することができた.特に,外部刺激応答性ナノカプセルという材料創製にまで展開できた点は,当初の予想を上回る点である.
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今後の研究の推進方策 |
単分子レベルでの集合過程イメージングを実現することが目標である.当初から研究ターゲットとして挙げている金属有機複合体(MOF)およびペプチドの自己集合過程に目標を絞り,研究を推進する.特に前者は反応生成物,中間体を安定に取り出すのが困難な反応系であるためより挑戦的な課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ材料の自己集合反応過程追跡の検討においては,ほぼ全ての検討を当研究室所有の通常分解能走査透過電子顕微鏡で行うことができたため,当初計画に比べて高分解能透過電子顕微鏡の有償利用回数が少なかった.
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次年度使用額の使用計画 |
分子レベル自己集合化挙動の観察達成に向け,高分解能電子顕微鏡の使用回数を当初計画よりも月当たり2日増やす.
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