研究課題/領域番号 |
26708016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 准教授 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 有機化学 / カーボンナノチューブ / 自己組織化 / 超分子化学 |
研究実績の概要 |
細胞膜の機能に倣い,自己組織化分子膜の疎水性空間を反応場として利用し,重合反応生成物の形態や集合状態を制御する試みが長きに渡って行われている.しかし天然の脂質膜や脂質類似分子からなる柔軟な人工分子膜では,基質や触媒の担持,または反応の進行に伴い膜が不安定化し,また膜の集合構造のゆらぎが大きいために,生成物の形態をナノサイズで精緻に制御することは困難であった.本研究では,水溶性フラーレンの自己集合により形成する剛直な分子二重膜を反応場として用い,重合生成物の集合形態をナノレベルで制御することに成功した.具体的には,当研究室で開発した直径約30ナノメートルのフラーレン二重膜ベシクルに開環メタセシス重合(ROMP)触媒を複合化し,フラーレン膜上の鎖状置換基と重合するモノマーの親和性に応じてナノ粒子,ナノカプセルを作り分けることができた.すなわち,脂溶性モノマーと親和性が低いフルオロアルキル鎖を持つ二重膜をテンプレートとした場合は生成物が速やかに相分離し,単一ポリマー鎖が折りたたんだ直径5 ナノメートルの粒子状の生成物を与えた.一方で,親和性が高いアルキル二重膜の場合では,膜内で重合反応が進行し,ベシクルとほぼ同サイズである直径30 ナノメートルの剛直なカプセル型集合体を得ることができた.フラーレンベシクル上におけるポリマー生成物の構造は走査電子顕微鏡観察により追跡され,二重膜上で相分離した粒子の形成がナノレベル分解能で明瞭に捉えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時空間展開する系としてのポリマー重合反応に着目し,その生成物のナノ形態を透過電子顕微鏡・走査電子顕微鏡の複合技術により解析することに成功した.「多分子集合体をその平均像ではなく一つ一つ取り出して解析する」という本研究の目的は達成されたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
原子分解能電子顕微鏡による集合体形成の追跡について更に詳細に検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
建物の新設により,研究代表者の研究実施場所が平成28年度中に移転となった.移設作業期間中,および実験機器類の再立ち上げ期間中は研究の実施が不可能であったため,研究実施計画に遅延が生じた.以上の理由から,補助事業期間を延長することとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた合成実験,および顕微鏡観察に必要な物品類の購入,および原子分解能透過電子顕微鏡をはじめとする分析機器類の使用料にあてる予定である.また,本研究で得られた成果報告を行うための学会参加に関わる旅費として使用する計画である.
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