研究課題/領域番号 |
26708018
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荘司 長三 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90379587)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細菌 / ヘム / 蛋白質 / 鉄 / ヘム獲得蛋白質 / 増殖阻害 / 金属錯体 / 光殺菌 |
研究実績の概要 |
本年度は、緑膿菌のヘム獲得蛋白質HasAに、ジフェニルポルフィリンと似た構造を持つジアザジフェニルポルフィリンが取り込まれることを結晶構造解析により明らかにした。また、ジフェニルポルフィリンを補足したHasAは、緑膿菌の増殖阻害効果が低いのに対して、ジアザジフェニルポルフィリンを補足したHasAは、緑膿菌の増殖を阻害することを明らかにした。結晶構造の比較から、取り込ませる金属錯体の違いによる顕著な蛋白質の構造変化はないことが示された。HasAに補足された金属錯体が、受容体蛋白質HasRに移動し、HasRのヘムの通り道を塞いでいると考えている。ガリウムフタロシアニンを取り込ませたHasAを光増感剤として用いることにより、赤色光を照射することで、99.99%以上の緑膿菌を殺菌できることをこれまでに明らかにしてきた。今年度は、多剤耐性緑膿菌に対しても同様の効果があることを確認した。さらに、通常、殺菌が困難なバイオフィルムを形成した緑膿菌も光照射により殺菌可能であることも併せて見出している。さらに、蛍光顕微鏡による観測により、緑膿菌の外膜に多くのHasRが発現していることと、HasRにガリウムフタロシアニンを取り込ませたHasAが強く相互作用して、固定化されていることなども明らかにしている。蛍光顕微鏡による観測により、HasRの発現を確認できるだけでなく、緑膿菌の阻害効果を示さなかった合成金属錯体補足HasAとHasRの相互作用に関して検討可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、HasAとHasR複合体の結晶化にも成功しているが、結晶は非常に小さく、構造解析をできるだけのX線回折データを得ることができていない。しかしながら、既に,高純度の機能を保持したHasRの精製に成功しており、培養のスケールアップにより十分な量のHasRを得られれば、結晶構造解析が可能と予想している。また、HasRを欠損させた緑膿菌の作成も終了しており、蛍光顕微鏡による観察から、緑膿菌の外膜に発現したHasRに、合成金属錯体を補足したHasAが強く相互作用していることなども確認している。研究課題終了までには,緑膿菌の光殺菌を論文として報告する予定である。また、多剤耐性緑膿菌やバイオフィルムを形成した緑膿菌の光殺菌にも成功しており、これらの成果も順次報文としてまとめる。さらに、鉄フタロシアニン以外の金属錯体として、ジフェニルポルフィリン誘導体がHasAに補足されることなども明らかにしており,おおむね順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、緑膿菌のHasRとHasA複合体の結晶化条件の最適化を進め,蛋白質結晶構造解析が可能なレベルの結晶を作製するとともに、ヘムを持たないHasRを単離精製することで,合成金属錯体を有するHasAとHasRの相互作用と金属錯体の構造の相関を明らかにする.鉄フタロシアニンを補足したHasAによる緑膿菌の増殖阻害をさらに強化するために、適当なリンカーで二つのHasAを連結し、多点の相互作用により緑膿菌のHasRに強く結合するHasA二量体を作製する。同様に、ガリウムフタロシアニンを有するHasAを二量体化することで、さらに短時間の光照射で緑膿菌を殺菌できる増感剤を開発する。バイオフィルムを形成した緑膿菌の光殺菌に関しては、バイオフィルムを分解する酵素とHasAをリンカーで連結した異種蛋白質連結体を作製し、バイオフィルムを分解しながら内側に存在する薬剤耐性化した緑膿菌を光殺菌するシステムを構築する。
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