研究課題/領域番号 |
26708023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅山 有和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378806)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グラフェン / ポルフィリン / スペーサー / 過渡吸収 / エキシプレックス / ペロブスカイト / 太陽電池 / 泳動電着 |
研究実績の概要 |
本研究のねらいは、ナノカーボンを、1)光機能性分子の連結土台、2)ペロブスカイト結晶構造を担持する土台として用い、その構造―光物性相関の解明と高効率光電変換系の構築を行うことにある。 1)我々はこれまでに、剛直かつ短いスペーサーであるフェニレンを介してポルフィリンを化学変換グラフェン(CCG)に共有結合連結した系(CCG-Ph1-ZnP)では、光励起により電荷分離状態は形成せず、エキシプレックスを経由した失活が起こることを見出している。本研究では、ポルフィリン-グラフェン連結系の光ダイナミクスに影響を及ぼす因子として、両者間の距離に着目した。すなわち、ポルフィリンとグラフェンを、長さの異なる剛直なオリゴフェニレンスペーサーを用いて共有結合連結することで、両者の電子的相互作用を系統的に変化させた系を構築すること(CCG-Phn-ZnP(n = 1-5)を試み、それらの構造と光物性の評価を行った。その結果、CCG-Phn-ZnP(n = 1-5)のポルフィリン部位を光励起すると、エキシプレックス状態を形成して電荷分離を起こすことなく失活するが、その失活過程は、オリゴフェニレンスペーサーの結合を経た相互作用ではなく、主にポルフィリンとグラフェンの間の空間を介した相互作用であることが示唆された。 2)ペロブスカイト型太陽電池の多孔性酸化チタンをナノカーボンネットワーク構造に置き換えた光活性層を形成させることを目指した。しかしながら、泳動電着法による、コンパクト酸化チタン(cTiO2)上への、単層カーボンナノチューブ(SWNT)およびSWNT-フラーレン(C60およびC70)複合体薄膜の作製を行ったが、均一な膜厚を有する薄膜を得ることは困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の一つであった多孔性ナノカーボンネットワークとペロブスカイト結晶の複合体の作製は未だに達成されていないが、グラフェンとポルフィリンの励起状態での相互作用における、両者の距離の効果を系統的かつ明確に解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
有機半導体分子の会合体および単量体を担持するナノカーボンとして、サイズの小さいグラフェンモデル分子系も着目する。ポリ多環式芳香族(PAH)分子など、有機合成によりボトムアップ式に形成されたグラフェンモデル分子を用いることで、構造の明確なナノカーボン土台を得ることができる。グラフェンの位置(平面vs. 端)が反応性や光ダイナミクスに与える影響を解明し、光機能化PAHの開発を行う。 また、無修飾のフラーレンC60単膜をペロブスカイト太陽電池の正孔輸送材(HTM)として用いることを試みる。無修飾のフラーレンは溶解性が低いために溶液塗布による製膜は困難である。また、可溶性基を付加したフラーレン誘導体は電子輸送能が低くなる上、ペロブスカイトを積層する際に溶出してしまうという課題がある。そのため、製膜後の処理により脱離可能な置換基が付加したフラーレン誘導体を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究では、コンパクト酸化チタン(cTiO2)上へのナノカーボンネットワーク構造形成の実現に至らなかった。そのため、太陽電池素子作製に関わる消耗品費が当初の計画よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、熱変換型のフラーレン誘導体の合成を行うため、有機試薬や溶媒など、有機合成に関する消耗品費に用いる。さらに、太陽電池素子作製に関わる消耗品費に用いる。
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