研究課題
本研究のねらいは、ナノカーボンを、1)光機能性分子の連結土台、2)ペロブスカイト結晶構造を担持する土台として用い、その構造―光物性相関の解明と高効率光電変換系の構築を行うことにある。1)光機能性分子であるポルフィリンを連結する土台として、グラフェンのモデル分子である多環式芳香族化合物(PAH)に着目した。可溶性のアルキル基を有する炭素数42と114のPAHであるPAH1とPAH3に対し、2つのポルフィリンがフェニレンスペーサーを介して共有結合により連結された分子PAH-Ph-ZnPを合成した。光励起により、PAH1からポルフィリンおよびPAH3からポルフィリンへのエネルギー移動発光が見られた。2)無修飾のフラーレンC60単膜をペロブスカイト太陽電池の電子輸送材(ETM)として用いることを試みた。一時的に溶解性を向上させることを目的として、逆Diels-Alder反応により熱脱離可能なアントラセン置換基を付加したフラーレン誘導体を合成した。その分子を用いてフラーレン膜を形成した後、140℃程度の比較的低い温度での熱アニーリング処理により置換基を脱離させて除去するという手法を検討した。膜厚20 nmのC60単膜をHBM層として用いたペロブスカイト太陽電池の電流-電圧測定を行ったところ、膜厚が7 nmのときに最大の変換効率(14.2%)を示した。これは、cTiO2層を用いた場合(12.9%)と比較して向上していた。
2: おおむね順調に進展している
構造が明確で、有機溶媒に対して高い溶解性を示すグラフェンモデル分子であるPAHを合成し、光機能性分子を連結するナノカーボン土台として活用することに成功したため。また、無修飾のフラーレンは溶解性が低いために溶液塗布による製膜は困難であり、また可溶性基を付加したフラーレン誘導体は電子輸送能が低くなる上、ペロブスカイトを積層する際に溶出してしまうが、それらの課題を、逆Diels-Alder反応により熱脱離可能なアントラセン置換基を付加したフラーレン誘導体を開発することにより解決したため。
光機能性分子であるポルフィリンを固定する土台として単層カーボンナノチューブ(SWNT)を活用する。SWNTとポルフィリンを連結する際、剛直で長さの制御が可能なオリゴフェニレンをスペーサーとして用いる。SWNTとポルフィリンの強い電子カップリングが光ダイナミクスに与える影響を詳細に検討する。また、SWNTの泳動電着膜を基盤とした多孔性ナノカーボンネットワークとペロブスカイト結晶の複合体を作製し、高効率太陽電池素子の構築を行う。
平成28年度の研究では、PAHや熱変換型フラーレン誘導体に関する研究を主に行った。高価であるSWNTの使用が少なかったため、消耗品購入費にかかる支出が抑制された。
平成29年度は、ポルフィリン-SWNT連結系や、SWNTの泳動電着膜を基盤とした多孔性ナノカーボンネットワークに関する研究を主に行うため、SWNTを多量に購入することが必要であり、消耗品購入費にかかる支出の増大が予想される。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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