研究課題
本研究はキチンナノファイバーの微細な形状と優れた力学的強度、多彩な生体機能を活かし、ハイドロキシアパタイトと複合した骨再生のための足場材料を開発するものである。本材料は成形外科や歯科治療において優れた成形性・操作性を有する。また、炎症を誘発することなく骨や歯の欠損部において足場として安定に存在し再生する。治癒後は体内で消化される。そのような全くの新規の骨や歯の再生材料を開発し、高齢化の進む現代社会において、人々の健康を増進していく。26年度は以下の課題に取り組み研究成果を得ている。(a)キチンナノファイバーの規格化:キチンナノファイバーを利用するにあたって、形状、化学構造、結晶性、物性、粘度等のデータを集積し、材料としての規格化を進めた。①製造装置の検討:キチンナノファイバーを製造するための有力な装置である「石臼式摩砕機」と「湿式微粒化装置」を用いて試料を作成した。解繊回数を変えて処理し、ナノファイバーの諸データを集積して規格化を進めた。②解繊条件の検討:ナノファイバーの製造において酸の添加が有効である。酸の種類や酸性度が解繊に及ぼす影響を評価し、製造の効率化と材料の規格化を進めた。③キトサンナノファイバーの製造:表面をキトサンに変換したナノファイバーを作成した。キトサンはアミノ基を持つため、アパタイトとの親和性がより高いであろう。反応条件を検討して脱アセチル化度を制御したナノファイバーを作成した。(b)キチンナノファイバー多孔質材料の作製:キチンナノファイバーをスポンジあるいはゲル状の多孔質体に成形した。①キチンナノファイバースポンジの作製:キチンナノファイバー分散液を凍結乾燥によってスポンジ状に成形した。②キチンナノファイバーヒドロゲルの作成:キチンナノファイバー間を架橋してネットワークを形成することによって、多孔質のゲル状材料を作成した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、キチンナノファイバーの特徴的な形状、物性、機能を活かして、「キチンナノファイバー/アパタイトの複合体」を作成し、外科や歯科治療に利用可能な新規な高機能・高性能の骨再生材料を開発することを目的としている。本研究の推進にあたっては、(a)~(d)の項目について検討する。(a)キチンナノファイバーの規格化、(b)キチンナノファイバー多孔質材料の作成、(c)キチンナノファイバー/アパタイト複合材料の作成、(d)キチンナノファイバー/アパタイト複合スポンジの骨再生機能の評価平成26年度は(a)および(b)の項目について実施し良好な結果を得たため、計画通りに進行している。さらに、(c)および(d)を予備的な実験で実施して、骨再生の徴候を確認している。27年度は得られたキチンナノファイバーの成形体を用いて、ハイドロキシアパタイトとの複合化および臨床試験を行う予定である。
キチンナノファイバー/アパタイト複合材料の作成スポンジあるいはゲル状に成形した多孔質のキチンナノファイバーの表面にアパタイトを析出させる。アパタイトを析出する反応剤としてヒトの体液と同等あるいは1.5倍のイオン濃度を持つ疑似体液を用いる。疑似体液への浸漬時間やpH、温度を変えて、析出するアパタイトの量とその形状、結晶構造などについて評価する。また、アパタイトより生体活性の高いカーボネートアパタイトについても複合化を行う。また、アパタイトが析出しにくい場合には、足場材として上述のキトサンナノファイバーを用いる。さらにアパタイト微結晶との直接的な複合化についても試みる。キチンナノファイバー/アパタイト複合材料の骨再生機能の評価作製したキチンナノファイバー/アパタイト複合体の骨再生材料の能力を評価する。ラットの頭頂骨を欠損したモデルに対して複合スポンジを埋設して、組織学的に評価する。所定日数が経過した後、埋設物、皮膚、頭頂骨までを採材し、新生骨の形成、新生骨と骨梁の連続性、繊維性結合組織、炎症性細胞浸潤の有無などを組織形態計測により評価し、骨再生材料としての能力を検証し、その最適化を行う。
受賞歴:2014.05第3回新化学技術研究奨励賞(新化学技術推進協会)、2014.07 奨励賞(セルロース学会)、2015.03 未来の工学賞(鳥取大学大学院工学研究科)
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Advanded Materials
巻: - ページ: -
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