研究実績の概要 |
従来までの知能情報処理デバイス・システムの研究において,神経生理学で重要な役割を果たすシナプスやニューロンの模倣は主にシリコントランジスタ回路の設計およびプログラミングが用いられ,基本的にはデジタル回路設計に依存している.このような状況の中,研究代表者は従来までの知能情報処理デバイスとは構成材料そして動作原理が全面的に異なる“無機シナプス”の現象を報告した(Ohno et al., Nature Mater. 2011).このシナプス模倣動作の特徴は,①電気化学材料中のイオンと原子の移動を利用してシナプス特性をうまく再現できる,②入力電気信号の演算(判定)とその記憶の両方を同時に行える,③回路設計やプログラミングが必要無いこと,である. 本研究課題では研究代表者が発見したイオンと原子の酸化還元反応に基づいて実現する新規な人工シナプス動作デバイスの開発とそれを実装した電気化学材料ベースの知能情報処理ハードウェアの構築を目指した. 当該年度はシナプスおよびニューロン特性で必須となる発火現象を再現するためのデバイス試作を行い,その電気特性を評価した.その結果,高電圧印加が必要ではあるが、プログラミングや回路設計無しに電気信号の振動現象を確認することができた.この結果が得られた理由の一つはデバイス中における金属フィラメントの伸縮現象にあると考えられる.
|