研究課題/領域番号 |
26709001
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
因幡 和晃 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00408725)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 材料力学・機械材料 / 連続体力学 / 流体構造連成 |
研究実績の概要 |
近年の数値解析技術の向上により,流体構造連成問題の研究が数多くなされているが,爆発による配管の破裂といった極限事故を取り扱う場合でも一般的な境界条件が適用できるのかについて検証するため,流体から固体または固体から流体へと波動が伝播する連成現象の解明と極限事故に適用すべき境界条件の提案を目指して,固体表面状態の影響や流体の種類を変えて固液連成界面における波動伝播現象の学理を確立することを目的として研究を行った.平成26年度は主として固液連成界面に並行な波動伝播現象が支配的な系において実験を行い,提案する境界条件を理論解析や数値解析に実装して妥当性を検証した. 全長1 mの矩形断面管に水を充てんして水撃波動を伝播させるための実験装置作成と可視化実験を行った.水撃波面機構の詳細を明らかにするため,シュリーレン法により液体の密度勾配を可視化した.矩形管は光学グレードの透明なプラスチック樹脂で作成し,管壁として厚さが異なる板を組み合わせることで,固液連成が強く生じる界面と連成が無視できる界面(可視化用)を作成して水撃波面の可視化に世界で初めて成功した.これまで振動現象が生じることは数値解析などでも予想されていたが,音速に近い速度で伝播する先行波に続いて伝播方向と垂直な方向に管壁振動と連成しながら伝播する主要波が管壁近傍の圧力上昇と管壁の変形を引き起こしていることを発見した.また数値解析においても同様の波動伝播を確認し,滑らかな管において実験とよく一致した傾向が得られることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体表面状態の影響や流体の種類を変えて固液連成界面における波動伝播現象の学理を確立することが本研究の目的であるが,平成26年度は,流体から固体または固体から流体へと波動が伝播する連成現象の解明について,固液連成界面に並行な方向の水撃波動伝播現象,すなわち,水撃波の伝播による圧力変動をシュリーレン法により世界で初めて可視化に成功し,管壁のひずみを同時に測定することで,管壁を伝播するたわみ波と水中の圧力波がどのように連成して伝播するかについてのメカニズムを明らかにした.また,水撃波動を生成する際に,固体から流体へ波動を伝播させており,双方の現象についての実験を行うことで連成現象の考察を進めている. また数値解析において,極限事故などに適用すべき流体構造連成境界条件の検討も進めている.本研究では,ANSYS AUTODYNを用いて連成解析を実施しているが,滑らかな管において,2次元軸対称の円管ならびに実験で用いた3次元の矩形断面管の解析を実施して,実験結果とよく一致した傾向の水撃波動の伝播を再現することに成功した.さらに,実験で撮影した水撃波の先頭波面と音響結合しながら断面方向に伝播する主要波の伝播も再現できており,水を用いた滑らかな管における現象については数値解析の妥当性が確認できた. 以上より,現在までの達成度は,おおむね目的を達成できているものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,主として,固液連成界面に垂直な波の伝播,すなわち固体表面近傍での気泡崩壊現象の可視化と衝撃力計測に注力する計画である.水中アーク放電により固体壁近傍で気泡を生成・崩壊させて衝撃力を測定する実験・計測システムは既に構築しており検証を進めながら測定精度の改良を行っている.今後,新たな理論モデルの提案や,固液連成界面における現象の解明を進めるとともに,固体表面の粗さや濡れ性を変化させて,現象を再現するための境界条件を提案する準備を進めている. 固液連成界面に並行な波の伝播についても流体や固体の組み合わせを変えながら実験を行い現象の確認と数値解析による検証を進める計画である.水撃波動の主要波における圧力の立ち上がりが緩慢でシュリーレン法における波動の観察は困難を極めたが,可視化できており,今後の課題としては,固体壁中の波の同時観察であるが,内部の波動伝播挙動の可視化が困難な場合には,表面でたわみ波を可視化する方法を検討する.また,現在,数値解析の境界条件設定方法について,ソフトウェア開発に携わっている伊藤忠テクノソリューション(株)の片山雅英博士に相談しながら研究を進めている.
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