研究課題/領域番号 |
26709002
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
杉田 修啓 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20532104)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破壊メカニズム / 血管壁 / コラーゲン / エラスチン |
研究実績の概要 |
本年度は,血管壁内構成要素の血管壁内分布と破壊位置との関係を調べると共に,構成要素単体での力学・破壊特性を調べた. まず,マイクロメートルスケールレベルにおいて,血管壁構成要素の分布を計測し,破壊開始領域との関連を調べた.血管壁の筋細胞である平滑筋細胞には,動脈硬化や動脈瘤などでよくみかける合成型の細胞と正常血管でよく見かけられる収縮型の細胞があるため,まず,細胞のタイプと破壊開始位置の関係を調べた.合成型のマーカータンパク質を染色し,顕微鏡下で破壊まで観察可能な2軸引張試験装置によりブタ胸大動脈試料を破壊させたが,これまでのところ,亀裂開始位置との関連は見られなかった.また,血管壁を壊す作用を持つ酵素分布と破壊開始位置との関係も調べたが,やはり関連はまだ見られていない.ただし,データ数が少ないため,今後データ数の増加による調査を継続するか検討している. 一方,構成要素のうちコラーゲン線維が破壊に影響している予備データを既に得ていたが,さらに別な方法でも確認するため,顕微鏡下で第2高調波像を撮影し,これと破壊開始位置を比較した.その結果,やはり亀裂開始位置にはコラーゲン線維と関連がある結果が得られた. また,血管壁内構成要素の単体の力学・破壊特性として,第1に破壊に関連することが考えられたコラーゲン線維を対象とした試験を実施した.まず,これまでの方法を改良し,効率よく力学試験を行う方法を確立させた.次に,血管壁の複数部位からデータを取得した結果,同じコラーゲン線維であっても,部位により力学特性が大きく異なり,ごく近傍の血管壁由来コラーゲン線維であっても,非線形と線径な力学特性を示すなど、大きく異なることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破壊試験装置の小サイズ化を検討したが,試料と装置の位置合わせの精度が不十分である可能性が大きいことが判明した.また,コラーゲンやエラスチンのみならず,他の成分の分布も検討するためには,別の装置を用いた方が良い可能性があり,こちらの仕様を検討しているため,小サイズ化は一時ペンディングしている.一方,血管壁内構成要素の力学試験については,第1目標のコラーゲン線維の力学試験データをほぼ取り終えており,同じコラーゲン線維であっても,引張強さが異なる原因が存在することを明らかにすることができた.従って,遅れている要素もあるが,発展した要素もあり,まずまずの進度であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず血管壁構成要素の素要因の力学特性計測を行うことを重点的に行う予定である.これが軌道に乗ってきたら,血管壁内のこの素要因の分布を調べることを実施する. また,今後は担当学生を増員すること等により,目標を達成する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,縮小サイズした引張試験装置を作製する予定であったが,途中で縮小化による位置合わせの精度が不足する可能性が大きいと判断し,この装置の作製を一時中止した.これにより,顕微鏡上で行う引張試験装置の費用を次年度に繰り越すこととなった.
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次年度使用額の使用計画 |
再度精度が十分な仕様の装置を作製することをまず検討する.しかし,この装置がうまくいかないようであれば,血管壁構成要素間の結合力を測定する装置を作製するために使用する予定である.
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