本研究は、プラズモニック構造体の光の高い制御性と、ナノメカニカル振動子の高感度性を組み合わせ、光通信の大容量化に資する波長計測素子を創出することを目的としている。 前年度までは、主に、プラズモニック構造の吸光特性の観点から波長計測の高分解能化を進めてきたが、今年度は機械振動の観点からの波長計測高分解能化に向けた研究を実施した。ナノメカニカル振動子上に配置したプラズモニック構造により、照射される光の波長に対し光吸収量(吸収熱)を波長依存させ、吸収熱(熱応力)の変化に伴うナノメカニカル振動子の共振特性の変化を読み取るといのが提案する波長計測の原理である。 この原理において、ナノメカニカル振動子の共振周波数変化から光波長を計測することも可能であるが、本研究では、高分解能な波長計測を実現する要素技術の一つとして、機械振動のQ値に依らない波長計測が期待できる微小連結機械振動子の波長計測への適用性を評価した。具体的には、外乱に対し振幅を敏感に変化させる微小連結機械振動子を利用することで、高分解能光波長計測にキーとなる熱応力の機械振動振幅からの高感度計測を試みた。結果として、微小連結機械振動子を中央連結型の振動子構造とすることにより、熱応力の検出感度として最大で0.6 kPaの感度を達成し、同寸法の両持ち梁型振動子の共振周波数シフトを利用した熱応力計測の場合と比較し、高い感度で熱応力を検出できることを実証した。 本成果は、光波長計測に必須の高感度な熱応力(光強度)の計測の一助となる成果であり、光波長計測の高分解能化に有効であると期待される。
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