研究課題/領域番号 |
26709008
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
花崎 逸雄 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10446734)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顕微鏡 / 微粒子 / フィラメント / 分散 / 塗布 / 乾燥 / プリンティッドエレクトロニクス / フレキシブルデバイス |
研究実績の概要 |
本年度は,流体中の微粒子群の動態を定量的に明らかにする際の粒子を追跡することが困難な状況において,流れ場の計測におけるPTVに対するPIVのように,顕微鏡動画データから拡散係数の場を評価する解析の方法論を考案した結果に関する特許を出願した.また,顕微鏡動画データから粒子の特定までは可能な状況において,時間的に隣接する画像間の対応関係を評価する際に生じ得る粒子誤認が粒子追跡アルゴリズムにおける変位の閾値パラメータに依存する問題への対策方法を考案して実証した(Micro and Nano Letters, Accepted).すなわち,多様な既存の粒子追跡アルゴリズムの多くが必要とする変位閾値の入力パラメータの影響を受けず,そのような解析の結果として現れる変位分布の特徴を解析することにより的確に拡散係数を抽出できる,簡便な方法を提案した.これは,拡散係数の評価において吸着に支配された軌跡とそうでない表面近傍のブラウン運動の軌跡が混在する中で両者を統計的に識別して評価するという研究代表者が以前開発した方法論(Jpn. J. Appl., Phys., Vol.54, 125601 (2015))を新たな視点から応用するものである.そして,分子論と連続体をつなぐ新たな流動計測理論の多岐に渡る潜在的な応用対象系の中から,プリンティッド・エレクトロニクスとフレキシブル・デバイスに直結した力学現象に着眼し,モデル系における基礎的な実験を実施した.その過程で,水中に分散した微粒子群やフィラメント群が乾燥するプロセスを工学的に取り扱う際に重要な知見を幾つか見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室を立ち上げてゆく過程で過渡期でありながら,着実に成果を挙げている.分子論と連続体の間の時空間スケールには熱揺らぎに起因するブラウン運動が存在しており,これは系の本質的な特徴である.流体中の微粒子の挙動を定量評価する上でこれまでに活用されてきた数多くの粒子追跡アルゴリズムが今でも共通して抱えている課題として,未知の系の特徴自体にも依存する解析用入力パラメータの存在がある.ブラウン運動を粒子追跡アルゴリズムから拡散係数として定量評価したい場合に,すなわち変位の大きさの分布が定量的に未知である状況において,粒子の変位に関する閾値をあらかじめ定める必要があることにより,その閾値に関する検証をするためのパラメータスタディを必要とする状況が長らく続いてきた.これに対して変位閾値の影響を受けずに拡散係数を評価できる手法を開発した.拡散係数が変位閾値に依存せずに評価できることにより,その後のさらなる解析への道筋を格段に見通し良くすることができる.このような手法開発をはじめとして幾つかの重要な成果を挙げており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまで普遍的な数理の視点から少しずつ方法論を磨いてきたが,これから幾つかの具体的な応用対象に関して方法論を展開していくにあたり,その個別的な特徴にも注目する段階に入っていく.普遍と具体を必要に応じて行き来する姿勢で本課題を追究してゆく.具体的には特に,プリンティッド・エレクトロニクスに直結した流体中の微粒子群の挙動を定量評価することを狙い,付随して基板材料として有力な候補の一つであるセルロース・ナノファイバーの水中における挙動についても注目して研究を進めてゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
学術雑誌論文を出版するためのオープンアクセス化を含む作業が,査読から出版社側の事務手続きまでを含む複合的な影響の結果として,次年度に持越しとなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
学術雑誌論文を出版するための費用を中心に使用する見通しである.
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