交付申請書に記載した本年度の目標について研究を実施し,以下の実績(1)(2)を得た. (1):本研究で既にイオン液体について見出された法則性とUC効率の向上指針が,イオン液体以外の液体でも成立するかどうかの点の解明を,新規試料の探索と創出とともに研究した.具体的に,実用には十分な熱安定性と難揮発性を有する一部がイオンである液体を用い,系統的な研究を行った.探索は,UCに用いる有機色素分子を必要な高濃度溶解可能なものを見出すことから着手し,その結果,最近報告されたあるカテゴリの液体が条件を満たすことを見出した.その液体をUCの媒体に用いて,世界に先駆けてUC試料の製作に成功し,かつ,従来のイオン液体で作製したUC試料から観測されたUC効率の最大値を上回る高いUC効率を達成した.興味深いことに,UC過程を支配する様々なキネティクスに関し,イオン液体試料のものと反対の傾向を示すものと,同じ傾向を示すものとに分かれることが発見された.具体的に,前者は「三重項-三重項消滅における一重項状態への分岐比」で,後者は「発光分子の三重項寿命」であった.さらに,昨年度から引き続き,時間分解蛍光偏光解消法による発光分子の回転運動特性の解明計測も系統的に実施した.これらの実験結果から有用な知見が得られたとともに,その解釈はUCのメカニズムにより深い理解を与えるもので,学術的に意義深いことに加え,UC試料の設計指針にも寄与するものである.これらの成果と知見は現在論文執筆中で,近日投稿を行う. (2):加えて,新規な発光分子の探索と入手を行った.その一部では,共同研究企業と議論を行い,新規な候補分子を入手,UC試料の作製を行い,基礎的な特性を測定した.論文としてまとめるには一段の慎重かつ系統的なデータの積み上げが必要であるが,このような成果と知見は,材料開発面からUC技術の新規展開に資するものである.
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