研究課題/領域番号 |
26709012
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒井 翔悟 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (80587874)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 三次元計測 / UAV / センサスケジューリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,飛行体に搭載したプロジェクターカメラによって高精度なアクティブ三次元計測を実現するために,高精度三次元計測技術とそれに伴う飛行体制御技術の確立を目的としている. 平成26年度は,プロジェクタ-カメラシステムを構築し,主に三次元計測方法について検討した.計測精度に大きな影響を与えるプロジェクタの光学特性の把握のために校正実験を行った後,位相シフト法,及びステレオ法による三次元計測を実施した.複数パタンの投影が必要な位相シフト法による計測では,撮影中の飛行体のわずかな移動が問題となる. そこで,本年度はステレオ法による三次元計測に焦点を当てた.テクスチャレスな対象の計測を可能にするために,プロジェクタから白黒二値のランダムドットパタンを投影する.高精度な三次元計測のためには,カメラによる撮像によってコントラストの高い画像が得られることが望ましいが,これは計測対象の材質に大きく依存する.たとえば,半透明材質を撮像すると低コントラスト画像が得られ,三次元計測精度は低下する.この問題を解決するために,特に半透明材質を対象とした投影パタンについて検討した. 投影パタンは最小基本パタンから構成される.この基本パタンのサイズを小さくとると,空間解像度は大きくなるが半透明材質に対する計測が困難になる.このトレードオフの関係について考察し,計測対象材質の半透明度合いを定量的に評価して,適切な最小基本パタンサイズを決定する手法を考案し評価した.実験によって,提案手法によって半透明材質に対する計測精度を大きく改善することに成功した. また,飛行中動的に計測ポイントを設定するアルゴリズムのマルチエージェントシステムによる環境モニタリングへの展開を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度について,1. プロジェクターカメラシステムによる三次元計測,2. 飛行体の制御系構築準備に分けて評価する. 1. プロジェクターカメラシステムによる三次元計測:平成26年度に,プロジェクタ-カメラによる三次元計測システムの構築を完了し,三次元計測を行い各種の評価試験を実施した.位相シフト法による三次元計測とランダムドットパタン投影下のステレオ法による三次元計測を行った.本研究では,二種類のキャリブレーションが必要となる.第一にプロジェクターカメラ間の相対的位置関係を同定するキャリブレーション,つぎに,255階調のパタンを投影するために必要なカメラとプロジェクタ間の光学特性のキャリブレーションである.これまでに提案されているキャリブレーション方法についての比較検討を行い,使用するキャリブレーション方法を決定した.さらに,「研究実績の概要」に記載した通り,半透明材質に対する高精度三次元計測のために,半透明の度合いを定量化する方法,および半透明の度合いに応じて適切な投影パタンのサイズを決定するアルゴリズムを構築し,実験による評価を実施した. 2. 飛行体制御系の構築準備:平成26年度は自律飛行制御系構築の準備のためのハードウェア構成の検討,構築,およびシステムを構築した上での各ハードウェアコンポーネント評価を実施した.具体的には,ヘキサコプタにIMU,GPS,地磁気センサなどの各種センサを搭載した後,飛行体の位置姿勢を計測し,そのデータをオンボード上のArduio(マイコンの一種)を介して地上局へ送信するシステムを構築した.飛行体の位置姿勢の計測精度は,飛行体による三次元精度に大きく影響するため,通常のGPSとRTK-GPSによる位置計測の精度について比較実験を行った. 以上の進行状況を総合的に考慮して,おおむね順調に研究が進行していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,1. センサスケジューリングアルゴリズムを応用した動的計測ポイント設定アルゴリズムの構築,2. 適応的三次元計測手法の開発に取り組む予定である. 項目1については,平成26年度に考案した初期型のアルゴリズムでは,システムの非線形について考慮しなかったため飛行体への適用が困難だった.平成27年度は,申請請書の記載通りセンサスケジューリングアルゴリズムを元にして,多数の候補の中から有用なデータを計測できると期待されるプロジェクタ-カメラの位置・姿勢を制御系のダイナミクスを考慮した上で決定するアルゴリズムを構築する.ステレオカメラを利用したワンショットのパッシブ計測によって対象の粗い形状データをリアルタイムで生成し,これを利用して高精度三次元計測が可能な計測ポイントを計算する. 項目2について説明する.「研究実績の概要」に記載した通り平成26年度に,半透明物体に対する三次元計測精度向上のために,最小基本パタンのサイズを適応的に決定するアルゴリズムを考案した.このアルゴリズムでは,1. 対象として主に半透明物体を想定している,2. 投影パタンは固定でパタンサイズのみを動的に変更する,という制約があった.本年度は,これらの制約を取り除き,A. 金属,半透明,鏡面など様々な材質を想定し,B. 計測精度向上のために投影パタンそのものを動的に変更可能な,アルゴリズムの開発を目指す.項目Bについては,飛行体による計測という問題の性質上,必要なパタンを高速に計算可能であることに特に重点を置く. 以上,今後の推進方策について簡潔に説明した.
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次年度使用額が生じた理由 |
飛行体に搭載するカメラとして無線通信機能を有しているN3-Airの購入を予定していたが,「現在までの達成度」に記載したとおり,オンボードのマイコンを介して地上局へ無線データ通信を行える目処がついたため,無線機能を有しない相対的に安価なカメラで代用できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
高精度計測のため,16bitの高感度カメラを購入し,実験に使用する予定である.
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