研究課題/領域番号 |
26709013
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
秋山 佳丈 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (80585878)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオMEMS / 細胞アセンブリ / 磁気アルキメデス効果 / バイオアクチュエータ |
研究実績の概要 |
本研究では,細胞や生体組織を機械部品として活用するバイオハイブリッドデバイスの創成に向けて,細胞のアセンブリ技術の開発を行っている.申請者の提案する高速磁気細胞アセンブリ法を用いて,繊細な生体組織や細胞にダメージを与えることなく,所望の位置へ所望の数の筋細胞をアセンブリする技術の確立を目指す.本年度は,マイクロピラー間にアセンブリした筋芽細胞凝集体の長期間維持および電磁石による凝集体の位置制御について研究を行った. まず,ネオジム磁石を使った高速磁気細胞アセンブリ法によりチャンバー底面に設置した2本のマイクロピラー間に橋渡しする形で,細胞アセンブリし,細胞凝集体を形成した.そしてこの凝集体の維持と筋組織への分化に向けて,2台の小型のペリスタポンプを使って培地を連続的に,新しい培養液を供給しつつチャンバー内の培養液を排出するシステムを構築した.このシステムにより,アセンブリ時は磁性化合物を含む常磁性培地で培養し,アセンブリ後細胞の増殖を促す成長培地(牛胎児血清含有)へと交換した.そして,最終的には筋芽細胞の分化誘導を促す分化培地(馬血清含有)へと交換した.これにより,3週間以上細胞凝集体をマイクロピラー間に接着させたまま維持することに成功した. 次に,スフェロイド(細胞凝集体)を任意の位置に設置するために,電磁石デバイスを用いてスフェロイドの位置制御の例として,円運動を実証した.まず,3次元電磁場解析を行い,電磁石デバイスの4つのコイルに供給する電流を変化させた場合の磁束密度および磁力の分布を求めた.そして,各コイルに90度ずつ位相をずらした正弦波を入力することで,スフェロイドを円運動させることが可能であることを確認した.次に,直径200μmのスフェロイドを作製し,解析結果通り,スフェロイドを円運動させることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,筋細胞凝集体をマイクロピラー間に接着させたまま長期間維持することおよび,電磁石を用いることで,細胞凝集体の操作の例として円運動に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の確立した方法により,マイクロピラー間に収縮能を持った筋組織を構築し,その力学評価を行う.また,筋芽細胞からだけではなく,幹細胞からの筋組織構築についても検討したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,任意の位置に細胞アセンブリするためには,任意の強さの磁場を発生させる必要があり,そのために電磁石デバイスを新たに設計製作する予定であった.しかし,磁場解析の結果,永久磁石を自動ステージにより走査することで,より容易に当初の目的が達成可能であることが分かった.そこで,電磁石デバイスは新規作製を取りやめることとしため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
電磁石デバイスの作製を取りやめる一方で,作製した筋組織の評価にあたって,アセンブリから分化培養の間,常時組織の状態をモニタリングする必要がある.そのため,H28年度請求額と合わせて,専用の観察系を構築するための顕微鏡を購入する.
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