研究課題/領域番号 |
26709014
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 知洋 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (20575162)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロロボット / 流体制御 / マイクロ流体チップ |
研究実績の概要 |
本研究では,マイクロ流体チップ内のマイクロロボットを高速駆動して所望の流体場を生成することで,細胞や微生物等の対象物を非接触操作する全く新しいマニピュレーション技術を創出することを目的としている.本年度は以下の研究を行った.
非接触マニピュレーション:前年度開発したプラットホームを用いて,マイクロロボットを用いて対象物の位置と姿勢を非接触操作する方法を検討した.まず,マイクロロボット用いて流体場を生成し,マイクロチップ内に混入させた微粒子(直径2~10μm)の動作を観察することで流体場の振る舞いを評価する実験を行なった.結果として,マイクロチップの形状やロボットのわずかなバラツキによって流体場の大きさや流速に大きな変化(誤差)が生じてしまい,解析的に微粒子の動きを予想することは難しいということが分かった.これにより,非接触マニピュレーションが難しくなる本質的な原因は,同一条件でロボットを動かしたとしても,全く同じ流体場が得られないためであることが明らかになった.そこで次に,マイクロチップの中に直径0.1~1mmの対象物(球状および円盤状)を配置してロボットで非接触操作を行なって位置決めする方法の検討を行なった.実験では,予備実験での検討を踏まえ,流体場の誤差をステップ状の外乱とみなし,外乱を補償するためにロボットの動作パラメータを適応的に調整する制御方法を新たに提案し,実際に対象物を所望の場所に位置決めできることを確認した.また,対象物の周囲をロボットが適応的に移動することで,操作者が希望する経路に沿って対象物を非接触位置決めできるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,マイクロ流体チップ中に封入したマイクロロボットを高速駆動することによって,任意の流体場を形成・制御しようという点が特色である.本年度は,非接触操作における問題点について実験結果と解析結果を基に整理し,当初の計画通り実際に対象物を非接触位置決め操作を行なうための制御方法を見出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
非接触位置決め精度の向上:現状では,最大で数10μmの位置決め精度が達成できているが,さらに精度を向上させるためのロボットの駆動パラメータや制御方法について検討を行なう必要がある.
ハイブリッドマニピュレーション:オンチップロボットによる操作の自由度を拡大するために,2台以上のロボットを用いて,非接触操作後に,接触方式に切り替えて操作を行う方式について検討する.操作を切り替えるタイミングや制御方法について検討するとともに,その時の精度や操作可能速度等について評価を行う.
細胞操作への応用:実際の細胞や微生物を用いることで,構築した基盤技術の応用可能性を検証する.位置や姿勢制御から刺激を行うまでの一連の流れをロボットで行い,細胞変形の影響による操作精度の低下などについて調査する.最終的には,微生物の刺激応答特性を定量的に計測するなど,生物の機能調査への応用可能性を探索する.
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