平成29年度は,小型MRI装置に最適な勾配磁場マイクロコイルと,微小構造計測に適したMRI信号計測用コイルの実現,および,これらを組み合わせたコンパクトMRIシステムを構築し,高分解能画像計測を試みた. 小型MRI装置用の勾配磁場マイクロコイルとして,フレキシブル基板にコイル配線を試作し冶具に固定する方法と,3次元冶具への真空蒸着による方法を利用した.フレキシブル基板を用いたコイルでは,X,Y,Z軸でそれぞれ34.8,30.5,59.9 mT/m/Aの勾配磁場効率となり,3次元冶具への蒸着を用いたコイルでは,X,Y,Z軸でそれぞれ25.2,43.7,10.9 mT/m/Aとなった.装置に据付けコイルの効率がおおよそ6 mT/m/Aであるため,平均で約6倍の効率向上を実現した. また,MRI信号計測用のRFコイルとして,ばね形状への真空蒸着による低抵抗なコイルと,段差円筒形状を利用した低寄生容量なコイルを試作した.配線幅の広いばね形状へ銅を蒸着し,蒸着後に圧縮することで,共鳴周波数86 MHzにおける抵抗値2.30 Ωという低抵抗なコイルを実現した.また,3Dプリンタで段差円筒形状を出力し,そこへ純銅線を巻き付けめっきする方法により隣接する配線間に段差を設け,寄生容量が低いコイルも実現した. さらに,これらの勾配磁場コイルとRFコイルに,位置合わせ機構を組み合わせ,微小試料計測に適したMRI計測部を実現した.各要素は3Dプリンタで外形を出力し,ポリイミド基板上に形成したコイル配線を組み合わせることで,均一な計測領域を持ったマイクロRFコイル,高い線形性を持った勾配磁場マイクロコイルを実現した.これらのコイルと計測対象の位置調節が可能な調整機構を組み合わせ,歪みの少ないコンパクトMRIシステムを構築し,直径約2mmの卵細胞のMRI画像計測を実現した.
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