研究課題/領域番号 |
26709018
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 智之 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50372305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スピンナノクラスター / ハイブリッド材料 / 電磁波吸収 |
研究実績の概要 |
これまで合成を行ってきた純鉄ナノ粒子は粒径10nm程度かつ粒径ばらつき20%以下の均一粒径であるものの、飽和磁化はバルク値(220emu/g)に比べ20~30%程度小さかった。これは、純鉄ナノ粒子が短距離秩序の結晶性を有する極微細の結晶粒であることに由来する。本年度、水素ガスを用いた熱処理を行うことで、長距離秩序の結晶性を有するbcc-純鉄相の実現を試みた。独自に見出した鉄ペンタカルボニルとオレイルアミンの反応前駆体を原材料とし、180~200℃に加熱した溶媒中に反応前駆体を注入することで純鉄ナノ粒子の合成を行った。その後、得られた純鉄ナノ粒子に対し、適切な流量で水素ガスを流した反応炉中で最適な反応温度、および、反応時間で熱処理を行った。磁気測定の結果、得られたナノ粒子は210emu/g程度の飽和磁化を有することが分かった。また、興味深いことに、電子顕微鏡観察から得られた粒子は粒子間の凝集が全く無いことが分かった。軽元素分析から、水素ガス熱処理後に得られた粒子においても炭素、水素、窒素を10wt.%前後含んでいることが分かっており、粒子凝集の抑制は粒子表面に残存するオレイルアミンによるものと考えられる。さらに、X線回折結果より、純鉄のbcc構造起因の回折線が少なくとも3本観測されており、長距離秩序の結晶性を有することが分かった。以上の結果より、得られた純鉄ナノ粒子はbcc-純鉄相であることが結論付けられる。以上の結果は、本研究において具現化するスピンナノクラスターハイブリッド材料の動作原理となる内部磁場不均一性の増強につながり、今後、酸化鉄をはじめとする飽和磁化の比較的小さいナノ粒子材料とのハイブリッド化を通して更なる高機能・高特性化につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超広帯域電磁波吸収の動作原理に不可欠となる内部磁場不均一性を積極的に誘導するための高飽和磁化純鉄ナノ粒子の合成に成功している。この結果は、次年度以降の飽和磁化の小さいナノ粒子材料とのハイブリッド化において重要な知見と位置付けられるため。
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今後の研究の推進方策 |
共凝集法を用いて、これまでに合成した純鉄ナノ粒子と、同じ程度の粒径を有する酸化鉄ナノ粒子とをハイブリッド化し、集合体としての静的磁気特性ならびに低周波・高周波磁界に対する動的応答特性を評価し、磁気損失に関する知見を得る。当初予定していたFe-Coナノ粒子と同程度の飽和磁化の値を純鉄ナノ粒子で実現で出来たため、ハイブリッド材料の作製と磁気的評価に注力することが可能となり、動作機構の更なる解明と高特性化が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、実験に用いる原材料や高純度ガス類、試薬類などの消耗品類の消費量について必要最小限に留め、効率的に試料作製等を行うことで消耗品費を節約できた。このため、次年度使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、上記のように今年度の研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額を含んでおり、次年度請求額とあわせ、加速度的に研究を推進するため、鉄基ナノ粒子合成のためのプロセスガスや評価技術に用いる実験器具類など主に消耗品費として研究費を使用する。また、構造評価に関して専門的かつ高度な分析技術を必要とする場合、積極的に外注分析を行うための費用としても研究費を使用する。さらに、磁石材料、および、ナノ材料合成、構造・物性評価関連技術をテーマとした研究会や国内学会に出席し、情報収集を行う。
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