研究課題/領域番号 |
26709020
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大島 孝仁 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60583151)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化ガリウム / エピタキシャル成長 / 半導体ヘテロ接合 / バンドアラインメント |
研究実績の概要 |
本研究では,近年ワイドバンドギャップ半導体として注目を集めている酸化ガリウム(Ga2O3)系半導体のヘテロ接合の作製,ならびにデバイス応用を目的とする. H26年度は,主にヘテロ接合作製とその薄膜及び界面構造評価を行った.また,新たに分子線エピタキシー(MBE)装置の立ち上げを行った. 酸素ラジカルビーム源(科研費使用)を搭載したパルスレーザ堆積法によりGa2O3単結晶基板上に, (AlxGa1-x)2O3混晶薄膜を作製した.なお,このラジカルビーム源によりGa種の再蒸発が抑制され,所望のAl組成を持つ混晶薄膜が作製できた.作製した薄膜は,ヘテロ接合デバイスに必須のコヒーレント界面を有していることが分かった. 我々はさらに,(AlxGa1-x)2O3混晶薄膜に対して,初めてドーピングによりn型伝導性発現に成功した.そのキャリア濃度も10^19 cm^-3台(x = 0.06)と比較的大きかった.この事実は,変調ドープ構造が作製可能であることを示唆している.一方で,(AlxGa1-x)2O3/Ga2O3界面におけるバンドオフセットは,ヘテロデバイス設計の重要な指針となる.そこで,反射電子・光電子分光を駆使して,x=0.10におけるバンドラインナップを求めた.その結果ヘテロ接合はタイプI型接合であることが分かった.また,伝導帯と価電子帯のバンドオフセットはそれぞれ0.16,0.09 eVであり,その比率16:9は65:35のAlAs/GaAsや2:1AlN/GaNと同等であった.この結果は,Ga2O3系においてもGaAs,GaN系で実績のあるHEMT等のヘテロ接合デバイスが可能であることを示唆している. MBE装置立ち上げについては,本体を科研費で導入した段階であり,H27年度予算でセルを取り付け成長を開始する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,ラジカル支援型分子線エピタキシー(MBE)装置を立ち上げ後,高純度薄膜を作製する予定であった.しかし,ラジカルセルと本体は導入できたものの,金属セル購入費が不足したため,MBE立ち上げを完了できなかった. そのため,MBEではないが,パルスレーザ堆積(PLD)法にラジカルセルを取付けてGa2O3系薄膜を作製した.SIMS分析からPLDで作製したヘテロ接合はターゲット由来の不純物が多く,半導体グレードの薄膜作製を目的とした当初の予定には未達である.しかし,研究実績に示したとおりコヒーレント成長,不純物ドーピング,ヘテロ接合のバンドアラインメント評価等のH27年度に実施予定の課題を一部達成した.以上を踏まえおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後,金属セルを購入し,分子線エピタキシー装置の立ち上げを完了し,半導体グレードの高純度薄膜を作製できる研究体制を整える. そして,ヘテロ構造作製を継続して行い以下の課題に取り組む.(1)コヒーレント成長を実現できる組成範囲を決定し,その組成までのバンドアラインメントを明らかにする.(2)ヘテロ接合における界面準位密度を光支援容量電圧測定から定量する.(3)変調ドープ構造を作製し,二次元電子ガスの発現を量子ホール効果,容量電圧測定から確認する.(4)高電子移動度トランジスタ作製を試み,トランジスタ特性を評価する.さらに,ワイドバンドギャップ半導体として,耐圧特性,温度特性などパワーデバイスとしての性能評価も行う.
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