研究課題/領域番号 |
26709024
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
河野 剛士 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452216)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノデバイス / 細胞内電極 / 細胞内計測 / シリコン / MOSFET |
研究実績の概要 |
脳の神経細胞やその他生体組織内部の各種細胞の”細胞レベル”での計測を可能とするナノエレクトロニクス技術の開発研究として、次に示す実験項目について実施した。 (1)エレクトロニクス集積化デバイスの検討・評価 (2)電気生理実験 加えて、発展的実験項目として申請時に予定していなかった(3)細胞内DNA導入も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの進捗状況 (1)エレクトロニクス集積化デバイスの検討・評価:高インピーダンス特性のナノ電極用のOn-chip生体信号増幅器の集積化を引き続き検討した。本学5 μm-NMOSテクノロジーにより、In vivo計測用としてバッファアンプ回路(Source-follower)[H. Makino et al., IEEE MEMS, 2015]を集積化した幅2 mmのデバイスを設計・製作・評価した。加えて細胞外信号ではあるが、高インピーダンス特性のプローブ電極デバイスから数十μV程度の局所集合電位(Local field potential, LFP)を含む神経信号を計測した[H. Makino and H. Kubo et al., 2017 in preparation]。 (2)電気生理実験:これまで、マウスの筋細胞を用いた生理実験を実施し、筋細胞を用いた細胞内電位(静止膜電位,-数十mV)の計測を実証してきた[Kubota et al., Small 2016]。この実績を基に、in vivoマウス大脳皮質内の細胞内計測を実施した。先ず、直径、長さを含むナノプローブ形状の最適化を検討した。その後、In vivo多チャンネル細胞内計測に向けたナノプローブ電極アレイデバイスの再設計、製作を実施し、また実装技術も検討した。 (3)細胞内DNA導入:申請時に予定していなかったナノプローブアレイデバイスの発展的実験として、細胞内DNA導入も実施した。これまでの培養細胞、脳切片サンプルの実績を積んできており、これらの成果を基にin vivoマウス大脳皮質内を用いた細胞内DNA導入を実施し、脳組織深部(> 100 μm)局所領域における多点DNA導入を実証した [A. Goryu, R. Numano, Y. Kubota, et al, 2017 in preparation]。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに申請書で計画したナノ電極による細胞内からの電位計測を証明した。この実績を基に、今年度では未だ困難とされているin vivoにおける脳組織内 の多チャンネル細胞内計測計測へ研究を展開させる。その他、DNA導入を含む本研究で開発するナノプローブデバイスの発展的な実験項目も検討・実施する。これらをもって、最終的に本研究プロジェクトを総括する。 下記の生理実験をとおしたデバイスの評価を実施する。 (1)in vivo多チャンネル細胞内計測:昨年度、in vivo多チャンネル細胞内計測用として製作したナノプローブ電極アレイデバイスを用いたマウス大脳皮質からの細胞内計測を実施する。 (2)細胞内・細胞外信号の同時計測:位置の確率的な問題により、細胞外にナノプローブ電極が配置される可能性があるが、これを利点として、脳組織内における細胞内と細胞外信号の同時計測を検討する。信号電位が100 μV以下である細胞外計測においては、電極の低インピーダンス化が課題であるが、これに関しては、これまでの細胞外電極で蓄積した実績で対応する[A. Fujishiro et al., Scientific Reports 2014, H. Sawahata et al., Scientific Reports 2016]. (3)細胞内信号計測とDNA導入:昨年度までに、脳切片、in vivo脳組織を含む各種神経細胞に対するDNA導入を実施し、その実現性を実証してきている。このDNA導入技術と細胞内計測技術を足し合わせた技術の提案も検討している。例えば、蛍光タンパクの導入により、これをマーカーとして細胞内信号を計測した細胞を断定するだけでなく、遺伝子導入による細胞機能の変化を同一のナノプローブ電極により電気的な細胞内信号として評価することも考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度までに申請書で計画したナノ電極による細胞内からの電位計測を証明した(Kubota et al., Small, 2016)。この実績を基に、2017年度では未だ困難とされている(1)生体内(in vivo)における脳組織内の多チャンネル細胞内計測に加え、(2)細胞内・細胞外信号の同時計測、さらに本研究の発展的な実験項目として(3)細胞内信号計測とDNA導入を実施する。これに必要な物品費、消耗品等と論文投稿料ならびに学会参加費として、今回の申請をさせて頂く。
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次年度使用額の使用計画 |
下記の使用を計画している。 物品費・消耗品(真空部品、デバイス材料費、デバイス実装費等)、旅費(国内会議、国際会議等)、並びに人件費・謝金、その他
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備考 |
Y. Kubota et al., 2016の研究成果が学術雑誌「Small」の表紙(front cover)として 採択された。関勇介君のIEEE MEMS2017の論文がStudent Paper Award Finalistに選出された。森川雄介君が第33回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウムにて奨励賞を受賞した。
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