センサ可動膜上部・下部に金ハーフミラーを集積して信号変換効率(可動膜変形時の出力信号変化の比)の向上を実現するデバイスの製作を行った。分光測定の結果、従来構造と比較して6.6倍の信号変換効率を実現した。さらに、センサ上にアルブミン抗原10 ug/mLを滴下した時に抗原抗体反応のリアルタイム応答取得に成功した。 次にセンサ感度の向上を目指し、エラストマー製の低ヤング率材料であるポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBS)ナノシート(59 MPa)を用いて作製した光干渉計において、ストレス感度を評価した。BSA抗体10 ug/mL の修飾時においてパリレンCを用いた従来構造のスペクトルシフト量は0.0625 nm/minであったが、SBSナノシートを用いた構造では1.41 nm/min程度のシフト量が得られ、約22倍ストレス感度の向上を実証した。 さらに、受容体タンパク質の構造変化応答取得を目的に、カルモジュリンをセンサ上に修飾し、カルシウムイオンに対する応答の評価を行った。1 mMCaCl2に対して20 nm程度のレッドシフトが確認され、分子の構造変化を捉えたことを示唆する結果が得られた。 吸着分子の質量・分子間力の同時測定のため、新規ドライ転写技術により単層グラフェンキャビティ封止構造を形成した。SEM観察、ラマンシフトによりキャビティ中が真空に封止された共振器が作製できた。圧力差によって0.05%の引張ひずみがグラフェン中に印加されていることが確認され、共振特性の向上が期待される。また、直径30~45 umのグラフェン共振器において室温、高真空下で共振周波数0.74~1.36 MHz、Q値83~391の範囲の共振ピークを観測することに成功した。この実測値から算出した質量検出限界は従来の高性能なシリコンNEMS共振器に対し、2桁程度向上できることが示唆された。
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