本研究の目的は,超広帯域(UWB:Ultra Wideband)レーダのための,超波長分解能・精度を実現する誘電体内部画像化を実現することである.本研究では,申請者が独自に考案した画像化法(RPM 法及び多重散乱波画像化)と偏波,散乱周波数特性等の複数の特徴量を融合することで,従来の「分解能」・「精度」を凌駕する次世代内部レーダセンサ技術を創出する. 本年度は,RPM(Range Points Migration)法を不均質媒質に拡張するため,FDTD法に基づく到達等位相面抽出を用いた,癌細胞境界形状推定を提案した.MRI画像から抽出される精緻な乳房モデル(周波数分散性)において,癌細胞が十分なコントラストを得ている場合,背景媒質の誘電分布を用いることで約1/100波長の精度及び処理時間5分を達成した.また,データ学習に基づく癌細胞判定においては,一般に不均質・分散性媒質が想定される生体組織のレーダ画像化は,適用すべき伝搬モデルが誘電特性・分布に依存するため,画像化結果をデータ学習することは難しいため,複数素子で得られる前方散乱データの複素周波数応答もしくは,伝搬遅延及び振幅減衰量の特徴入力データを検討し,200の教師データベースを用意し,30の未知データに対して,相対誤差約20%で再現することをFDTD法に基づいた数値計算により確認した. また,画像化アルゴリズムの高速化を検討し,適切な改良を加えることで従来に対して数百倍以上の処理速度の改善を達成し,3次元問題においても数十分程度で高精度な画像を得られることを数値計算および実験により確認した.
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