研究課題/領域番号 |
26709031
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
皆川 浩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10431537)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インフラマネジメント / コンクリート / 劣化予測 / 電気化学的特性 / 塩害 |
研究実績の概要 |
本研究では,電気抵抗率と塩化物イオン拡散係数の関連性に及ぼす含水状態の影響を検討した.実験では含水状態を均質に調整した厚さ1cmのセメントペースト供試体を用い,電気抵抗率および電気抵抗率から推計される塩化物イオン拡散係数(以下,推計拡散係数),塩水噴霧試験から求めた見かけの塩化物イオン拡散係数(以下,見かけの拡散係数)を複数の含水状態で測定した.そして,測定結果から不飽和状態における推計拡散係数と見かけの拡散係数の関連性について検討した. その結果,次の結論が得られた. セメントペーストの相対含水率が0.42~1.00の範囲では,塩水浸せき試験から求めた見かけの拡散係数に対する塩水噴霧試験から求めた見かけの拡散係数の比(以下,見かけの拡散係数比)が,実験結果から導出した任意の相対含水率における推計拡散係数に対する飽和状態の推計拡散係数の比(以下,推計拡散係数比)の関係式と一致する傾向を示した.これより,相対含水率が0.42~1.00の範囲のセメントペーストにおいては,不飽和時の見かけの拡散係数を電気抵抗率により評価できる可能性を示唆することができた. なお,推計拡散係数と見かけの拡散係数の関係には空隙構造だけでなく,塩化物イオン固定化や材齢,塩分浸透の停滞などの要因の影響も考えられ,推計拡散係数と見かけの拡散係数は定量的には一致しない.しかし,これらの拡散係数を飽和状態の拡散係数の比を取って比較すると,同一相対含水率において推計拡散係数比と見かけの拡散係数比は概ね一致することが確認された.これは,飽和状態の拡散係数に対する不飽和拡散係数の比として表すと,見かけの拡散係数に影響を及ぼす諸要因の影響が相殺され,拡散係数の差異の支配的要因となる含水状態とその連続性の影響が強く表れたためと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において最大の目的であった「電気抵抗率による不飽和状態の塩化物イオン拡散係数の推計」について,セメントペーストによる実験により,当初予想していた成果が得られた.特注した試験装置(塩水噴霧試験装置)の運転状況および性能は期待以上であり,今後も問題なく本研究課題を遂行していくことが可能である.
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり,本研究において最大の目的であった「電気抵抗率による不飽和状態の塩化物イオン拡散係数の推計」について,セメントペーストによる実験により,当初予想していた通りの成果が得られている.今後はこの成果を踏まえ,種々の結合材,骨材を使用したモルタル,コンクリート供試体への実験に順次拡張していく予定である.
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