研究課題/領域番号 |
26709032
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 浩嗣 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (10573660)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 物質移動モデル / 剛体ばねモデル |
研究実績の概要 |
平成26年度は、主に既存の剛体ばねモデル(RBSM)解析システムへの物質移動モデルの導入を軸に研究を推進した。本研究は、疲労と鉄筋腐食を同時に受けるコンクリート構造物に対する耐久性評価を目的としており、そのためには、疲労および鉄筋腐食に伴うひび割れの発生、腐食を発生させる物質の移動現象、鋼材の腐食反応を連成させた解析システムの構築が必須である。疲労によるコンクリートのひび割れ発生現象については、離散解析手法のひとつであるRBSMに時間依存型構成モデルを導入した既存の構造解析により、高い再現性をすでに得ているため、まずはじめに取り組むべき課題は、物質移動モデルの導入であった。 塩化物イオン、酸素、水等の腐食発生物質の移動現象をモデル化するため、コンクリート要素内およびコンクリート要素境界面に、新たなトラス要素を配置したモデルを作成した。前者がひび割れ以外の部分の物質等価現象、後者がひび割れ内の物質移動現象に相当するものである。塩水を模擬した境界条件をコンクリート外面に境界条件として与え、コンクリート中の塩化物イオン分布の時間的変化をFickの拡散則と比較した結果、解析結果が理論値とほぼ整合することを確認した。また、コンクリートに模擬ひび割れを与えたケースも解析した結果、塩化物イオン濃度がひび割れ部に局所化する現象が解析的に得られた。以上のことから、構築したモデルにより、ひび割れを有するコンクリート中の物質移動現象を良好に再現することができることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核のひとつである物質移動現象のモデル化を、平成26年度中にほぼ完成させており、本課題はおおむね順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、疲労によるひび割れ進展を再現するための既存のメソスケール時間依存RBSM解析システムを、三次元に拡張することを計画している。これは、鉄筋腐食に伴うコンクリートのひび割れは三次元的に分布することが知られており、既存の二次元解析モデルでは、ひび割れ部における物質移動と腐食反応の再現性が不十分と判断されるためである。研究代表者は平成26年度の1月に東京大学生産技術研究所に異動しているが、幸いにも、三次元のメソスケールRBSM解析システムが同機関ですでに整備されている。RBSMは、解析モデルの次元によらず、ほぼすべての構成モデルが一次元のばねの挙動で表されるという特徴を有しており、既存の二次元解析における時間依存型構成モデルを三次元解析に移植することは、比較的容易であると予想される。 さらに、平成27年度は、前年度に開発した物質移動モデルとの融合を図る。ここまで研究を進めることで、疲労によるコンクリートのひび割れ発生と塩化物イオン、酸素、水等の各種劣化因子の浸透現象とがコンピュータ上で連成され、疲労と塩害の複合劣化が再現可能な数値解析技術の大部分が開発されることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は平成27年1月16日に現在の所属研究機関に異動しており、研究環境が大きく変化した。特に、実験設備や解析用コンピュータについて、新規購入の必要性を知るためには、現所属研究機関の他のメンバーとの調整が必要であり、年度末までの短い期間で購入計画を立てることが困難であった。 以上の理由で、当初予定していた平成26年度の助成金に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現所属研究機関の他のメンバーとの調整を行ったことで、次年度に向けての新規購入計画が決まりつつある。その主な使途は、計算用コンピュータである。本研究では、構造解析と物質移動解析を融合した三次元解析を長期耐久性評価を目的として実施する予定であり、解析の実行には高い性能を有するコンピュータが必要である。現在の所属研究機関の状況を考えて、1または2台の計算用コンピュータを購入する予定であり、その購入費用として100万円~200万円程度を予想している。平成26年度の助成金未使用額1446560円は、これに充てる予定である。
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