本研究では,遡上域から沖浜帯までを研究対象領域とし,現地観測結果に基づいたプロセスベースの鉛直混合メカニズムの解明と検証,および前浜に形成されるバームからバー沖側端までの底質移動の動態解明を行うことを目的とし,これまで現地観測を実施してきた. 研究最終年となる平成29年度は,平成28年度までに確立した底質の鉛直・岸沖動態に関する現地観測方法(コアサンプリング,波浪観測,地形形状観測等)を概ね踏襲した現地調査を実施した.蛍光砂の投入量をこれまでの2倍となる1カ所500 kgとし,底質の岸沖方向に加え,底質の鉛直混合についても評価できるよう調整を行った.観測は5月に実施し,蛍光砂は汀線近傍,トラフ領域,アウターバー沖側の計3カ所に投入した.蛍光砂投入の12日後,岸沖方向計10地点においてコアサンプリング,および表層底質採取を実施した.採取したコアについては,X線CT撮影,スキャナー撮影に加え,深度毎の蛍光砂採取,粒度分析を行った.観測データ解析の結果,底質移動に関しては,これまでに実施してきた観測のアウターバー地形を有しない際の挙動と類似しており,バー沖側の底質においてもバーム位置まで輸送されていた.また,砕波帯内,および汀線近傍に投入した蛍光砂は戻り流れによりバー沖側まで輸送されていた.底質混合については,高波浪イベントにおいても観測期間中の最低地盤からの深度に関しては砕波波高の約18 %で評価できることがわかった.ただし,アウターバー頂部に関しては,混合厚はほぼゼロであった.また,砕波帯沖側の混合については,砂連の波高に依存していることが推察された.一方,前浜地形変化モデルに関しては,他海岸での適用に向けた検討を行い,底質粒径を変数として決定させる未知係数の導入により,粒径が異なる海岸においても本モデルが適用可能であることを示した.
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