前年度までで観測したホイスラー合金系Co2MnZでの大きな異常ネルンスト効果のメカニズムを解明するため、ホイスラー合金の組成依存性をより詳細に調べるとともに、第一原理計算に基づく異常ホール伝導度と、熱電気テンソルαxyの室温近傍でのエネルギー積分値を計算した。その結果、ホイスラー合金の規則度がB2構造からL21l構造に変化した際に、異常ホール効果の伝導度が増大するとともに、αxyも5倍程度まで大きくなることがわかった。αxy項によって生じる異常ネルンスト効果の大きさは、ゼーベック効果 x 異常ホール効果の項とほぼ同程度であった。この結果は、ゼーベック効果や異常ホール効果がゼロとなる強磁性体においても、異常ネルンスト効果が生じうることを示す結果であり、今後、大きな異常ネルンスト効果を示す材料探索の重要な指針を得ることができた。実用的な熱電発電利用を考えるためには、熱電対列とした場合の熱電体自身の抵抗と外部ワーク抵抗との整合が重要となる。従って、上記薄膜を厚膜化した場合や、バルク試料化した場合のネルンスト特性の変化を調べる必要性がある。本研究では、上記Co2MnZ薄膜の厚さを従来よりも一桁大きい300nmまで増大させ、その特性を評価した。その結果、30nm膜と300膜でほぼ同様の熱電性能が得られることが確認された。この結果は、熱電対列の内部抵抗を膜厚により制御できることを示しており、今後、環境発電を応用を目指す上で重要な成果である。本成果を2017年1月と2月に開催された2つの国際ワークショップで招待講演を行った。
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