研究課題/領域番号 |
26709046
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
野崎 隆行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, スピントロニクス研究センター, 研究チーム長 (60452405)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | スピントロニクス / 電圧効果 / 磁気異方性 / 磁気光学効果 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、電界駆動型磁気光学デバイスの実現をターゲットとして、3d遷移金属超薄膜磁性層における磁気光学効果特性を電界で変調することを目的としている。平成27年度は低リーク電流でかつ比較的高い比誘電率を有するSrHfO3に着目した電界効果素子の作製を試み、電界による磁気異方性制御を用いたカー回転角制御の観測に成功した。 SrHfO3薄膜はPLDによる作製を用いてNb:SrTiO3基板上に作製した。室温成膜時にはアモルファス構造で比誘電率が20程度であるのに対し、800℃でのアニール処理によって結晶化が促進し、それとともに比誘電率が30程度にまで上昇することを見出した。このhigh-k誘電層付き基板上に、MBEおよびスパッタリングを用いて、Nb:SrTiO3/SrHfO3誘電層/Fe/FeB/MgO/ITO構造からなる電界制御がた磁気光学素子を試作した。 まず電気伝導特性に関して評価を行い、SrHfO3誘電層を用いた場合、SrTiO3を用いた実験に比べてリーク電流を約3桁低減できることを確認した。同素子において電圧印加による磁気異方性への影響を評価した結果、約60 fJ/vmの異方性変化率を観測することに成功した。これにより最適な垂直磁界条件下において約0.03度の電圧カー回転角制御を実現した。一方、清浄な界面形成による電圧効果増大を目指したCr/超薄膜Fe/MgO構造における磁気異方性制御を検討し、約0.5nmの超薄膜Fe領域において、300 fJ/Vmに達する異方性変化が誘起されることを見出した。 今後は上記の技術組み合わせるとともに電圧効果をさらに増大させるため、スピン軌道相互作用の大きい元素を界面に挿入するなどの界面エンジニアリングを検討し、目標とするカー回転角0.2度の制御達成を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リーク電流の小さいhigh-k誘電層と比較的大きな電圧磁気異方性変化を両立する電界制御型磁気光学素子を開発し、カー回転角制御を実証した点で進展が見られた。ただし、比誘電率の増大に値する変化率増大効果はまだ未確認であり、超薄膜強磁性層/誘電層接合における界面磁気異方性、電圧効果の構成元素依存性、酸化状態依存性等を検討し、最適な材料・構造設計の指針を明らかにする必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
現状のFeをベースとした磁性層にスピン軌道相互作用の大きい元素の添加、もしくは界面挿入層を検討し、界面磁気異方性と電圧効果を飛躍的に増大させるための材料探索に注力する。界面制御に関してはMBE成膜によるエピタキシャル素子が有利であるため、まずは基本的な材料探索をMBEで進め、有効な材料についてスパッタリング成膜に移行するとともに、high-k誘電層構造との複合化を図る。また、希土類系元素を含む系に関しては今年度拡張した低温マイクロカー効果測定装置を用いて電圧磁気異方性制御の温度依存性を明らかにするとともに、補償点の電圧制御に着目した研究にも着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
薄膜作製に使用する母材の価格低下により見積りよりも安く入手可能となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の母材購入に使用する。
|