研究課題
本研究の目的は、圧電性(電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換機能)を示す強誘電体について、これまで薄膜や微粒子等のナノスケール構造で分極を減少させると考えられてきた反電場を積極的に利用して、新奇な圧電メカニズムを創成するものである。項目「ナノテンプレートを利用したPZTナノロッドの成長とサイズ制御」については、平成27年度は光硬化型樹脂とPZTのCSD原料の混合溶液を用いて作製した島状アレイの焼成条件の最適化を行った。その結果、高い結晶性を実現するためには島状アレイのアスペクト比を犠牲にする必要があることがわかった。そのため、ガス透過性PDMSモールドを用いてCSD原料のみをインプリントする手法に変更した結果、高い結晶性とアスペクト比を両立する島状アレイの作製に成功した。項目「ナノロッドの特性評価」については、集束イオンビームでトップダウン加工したナノロッドの評価を行った。その結果、{100}配向ナノロッドにおいては、サイズの減少とともに分極軸がロッド長手方向に直交するaドメインの割合が減少し、幅1ミクロンメートル以下のロッドでは、分極軸が完全に長手方向に平行なcドメインとなることが明らかになった。更に、完全cドメインのナノロッドの側面を白金で被覆すると、一部の領域がaドメインで安定化されることも分かった。これらの結果は、ナノスケール強誘電体のドメイン構造が電気的境界条件によって大きく左右されることを強く示唆している。また、最終年度に予定していた項目「反電場を利用した巨大圧電メカニズムの検証」に関して、ロッド長手方向から分極軸が傾斜した{111}配向ナノロッドの電界誘起格子歪みを測定した結果、バルクを超える圧電応答が起きる可能性が見出された。そこで、平成28年度は計画を前倒しして、これらの結果の理論的な考察を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
項目「ナノテンプレートを利用したPZTナノロッドの成長とサイズ制御」については、島状アレイ構造の作製方法に一部変更が生じ、レーザー堆積法でその上にPZTナノロッドを成長させる条件の最適化ができていないことから、やや遅れが生じている。そのため、平成28年度の前半はこれに集中して取り組む予定である。一方、項目「ナノロッドの特性評価」は順調に進んでおり、ナノスケール強誘電体のドメイン構造が電気的境界条件によって大きく左右されることを強く示唆する興味深い実験結果を得ている。また、最終年度に予定していた項目「反電場を利用した巨大圧電メカニズムの検証」に関しては予定よりも早く進んでおり、全体としては概ね順調に進んでいる。
上記のように、高い結晶性とアスペクト比を両立する島状アレイの作製に成功したため、平成28年度の前半は、レーザー堆積法でその上にPZTナノロッドを成長させる事に集中して取り組む。その他の項目については、計画通り推進する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Proc. IEEE ISAF-ISIF-PFM 2015
巻: 2015 ページ: 175, 177
10.1109/ISAF.2015.7172698
Appl. Phys. Lett.
巻: 107 ページ: 022902-1, -5
10.1063/1.4926963
J. Appl. Phys.
巻: 118 ページ: 072012-1, -6
10.1063/1.4927810
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 54 ページ: 10NA07-1, -4
10.7567/JJAP.54.10NA07
Ferroelectrics
巻: 490 ページ: 167, 173
10.1080/00150193.2015.1072693
http://enemat.nucl.nagoya-u.ac.jp