研究課題
本研究の目的は、圧電性(電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換機能)を示す強誘電体について、これまで薄膜や微粒子等のナノスケール構造で分極を減少させると考えられてきた反電場を積極的に利用して、新奇な圧電メカニズムを創成するものである。平成28年度は、項目「結晶方位・サイズの異なるナノロッドの特性評価」について、ロッド長手方向に分極軸を有する正方晶(001)ナノロッドと、長手方向から分極軸が傾斜した正方晶(111)ナノロッドの電界誘起格子歪みを測定・比較した結果、(001)ナノロッドはバルクに匹敵する電界誘起格子歪みを示したのに対し、(111)ナノロッドはバルクと大きく異なる電界誘起格子歪みを示した。後者は印加電場の大きさと時間に対して異なる応答を示すことから、分極傾斜ナノロッドの圧電応答は、側面での不完全な電荷補償がもたらす反電場と強く関係していることが示唆された。また、項目「理論予測との比較・検討」について、上記の分極傾斜ナノロッドを対象に、電場印加および非印加時の安定相のサイズ依存性を現象論で調べた。その結果、ロッドのサイズ(直径)が減少すると、電場印加によって分極方位がロッド長手方向に変化する相転移が起きやすくなることが示唆された。平成29年度は、実験・理論をさらに進めるほか、これまでに得られた成果を概観して、最終項目「反電場を利用した新奇圧電メカニズムの検証」に取り組む予定である。
2: おおむね順調に進展している
項目「結晶方位・サイズの異なるナノロッドの特性評価」については、放射光XRDの実験で明瞭な結晶方位依存性を示す結果が得られ、サイズ依存性についてもPFMを用いた評価を中心に順調に研究が進展している。また、項目「理論予測との比較・検討」についても安定相のサイズ依存性が明らかになっており、全体として概ね順調に進んでいる。
上記のように、分極傾斜ナノロッドにおいてバルクと大きく異なる圧電応答が得られており、ロッド側面での不完全な電荷補償がもたらす反電場と強く関係していることが示唆されている。また理論的検証も予定通り進んでおり、平成29年度は主として最終項目「反電場を利用した新奇圧電メカニズムの検証」について取り組む予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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